【APヘタリア】フォアローゼズに溺れたい【スコ兄】

19杯 ページ19

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「やっほ、Aちゃん……だっけ？」

カフェでひとり、集中して課題をやっていると目の端に何度もブロンド髪がチラついて。ふと顔を上げるとフランシスさんがいた。ニコニコと笑いながらカフェオレを片手に私を見つめる彼。私が驚いて背筋をピンと伸ばすと、その様子が猫のようだと笑う。

「改めて、俺はフランス、よろしくね」
「フランシスさん、よろしくお願いします」

差し出された右手に応えるべく、私はノートパソコンを閉じて右手を差し出した。手を握って何度か上下に振ったあと手が解放されて、フランシスさんは笑いながら言う。

「違う違う、俺はフランス。スコットランドと同じ、俺も国だよ」
「……？ ごめんなさい、彼はスコットランド出身だったと思うんですけど……」
「……まさか、アイツ言ってないの？」

怪訝そうな、信じられないと言ったような表情で眉を顰めるフランシスさん。きっと私も同じような表情をしているだろう、フランシスさんの言っている言葉の意味が分からなくて私は眉間に皺を寄せて首を傾げるしかできない。

フランシスさんはやってしまった、と言わんばかりに頭を大袈裟に掻きむしって頭を抱えた。ここで何も聞かなければ今までと同じ日々がやってくるだけだ。喉から手が出るほど知りたくてたまらない彼について、フランシスさんは何かを知っている。

私は聞き返さずにはいられなかった。彼が隠そうとしていることを暴くのは気が引けたけれど、ここで聞かなければもう知る機会はないような気がしたの。

「教えてください、彼のこと」
「……アイツにはなんて聞いてるの？」
「何も知らないんです、本当に何も。名前も、年齢すらも。何をしている人なのかも。スコットランド出身ってこと、弟がいること、それだけ」
「……それだけでよく恋人になろうって思えたね」
「……それでも、彼のことを疑いきれなくて」

愛されてるね、とフランシスさんは呟いた。深いため息の後に、彼は躊躇いながらゆっくり口を開く。その内容はまるで信じられないほどファンタジー的で、でもフランシスさんの様子は冗談を言っているようには見えない。

「俺たちは人間じゃなくて、国、国の化身だって言えばわかるかな？ 俺はフランス、アイツはスコットランド。弟がどう、とか言ってたけどスコットの弟はイングランドとかウェールズのこと。北アイルランドもかな」
「国の化身って、なんなんですか」

私は理解できない概念に頭を抱える他はなかった。

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