16杯 ページ16
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日本で恋人がいたのは大学一年生が最後で、アメリカでは恋人という恋人はいなかった。いいな、と思っても彼らはすぐにハグしてキスして。こちらのペースなどお構い無しに次のステップに進もうとする。彼らにとってはそれが当たり前かもしれないけれど、もう少し私を大事にしてくれても良いじゃん、なんて思っていた。
「A、変わったよね」
「そう?」
「うん、なんかこう……、丸くなったっていうか。初めて教室で見た時はすごく怖かったんだから」
随分と少なくなった友達、だけどノリも付き合いも悪くなった私と一緒にいてくれる友達。典型的なアメリカ人よりもずっと大人しく丸く物静かな少女だけれど、カフェで頼むアイスアメリカーノはベンティサイズで、アメリカ人らしさが見え隠れする少女。
彼女と一緒にカフェのコーヒーを片手に大学付近の公園でだべっていた。日本とアメリカの違い、日本のアニメについて、ディズニー作品について、大学で習ったことについて、課題について、お互いの彼について。話すことは尽きなくて、女の子がおしゃべりなのは日本だけじゃないことを改めて思い知った。
「ねえ、あれ。Aの彼じゃない?」
彼女の指さす方を見ると大きな背に肩幅、チョコレートを溶かし込んだような髪色、そして特徴的なアホ毛が目に飛び込んできた。彼の隣には少し長いブロンド髪の男性。
(仕事中かな、話しかけてもいいかな)
私と彼女が意を決してそろそろと彼に近づく。
彼らの真後ろ、彼らの話し声が聞こえるくらいにまで近づくとブロンド髪の彼が話す言葉は英語では無いことに気がついた。そして、私たちが話しかける前に勢いよくブロンド髪の彼が振り返った。目を丸くして私を見たけれど、すぐに彼の視線は友達の方へと向かった。
「A! なんでここにいんだよ!」
「私、大学がすぐそこだから……」
ブロンド髪の彼よりも少し遅れて振り返った彼もどこか嬉しそうに笑いながら私を抱き寄せる。少し寂しそうに微笑むブロンド髪の彼。私と彼が離れると、ブロンド髪の彼は言う。
「紹介してよ、スコット」
「ああ、俺の恋人のAだ。こいつはフランシス、俺の同僚だ。そっちの子は、Aの友達か?」
「1番の友達のステファニーだよ」
「Aったら!」
嬉しそうに私の背中を軽く叩く彼女、フランシスさんは私と彼女の手の甲に優しくキスを落とす。
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おず(プロフ) - おしゃち!さん» コメントありがとうございます💕最後までご愛読頂いた上にそのように言っていただけて嬉しい限りです、ありがとうございます!これからも精進して参ります! (2月25日 11時) (レス) id: 0e6497002e (このIDを非表示/違反報告)
おしゃち! - 完結おめでとうございます!出会いによって人生が変わっていくドラマチックなストーリー、毎話ドキドキしながら読ませて頂きました。ラストの回収が見事過ぎて言葉が出ません🥲︎素敵な作品をありがとうございました!! (2月24日 1時) (レス) id: cebb1c38ee (このIDを非表示/違反報告)
おず(プロフ) - メイベルさん» コメントありがとうございます!一緒にスコ兄の底なし沼にハマりましょう!!アーサーの方も読んでくださりありがとうございます、更新もラストスパート切りましたので頑張ります!お付き合いいただけると幸いです😍 (2月22日 12時) (レス) id: 0e6497002e (このIDを非表示/違反報告)
メイベル - コメント失礼します!!大人っぽい雰囲気最高です!!元々好きでしたがもっとスコ兄に沼りました!アーサーの方の小説もとてもキュンキュンして読みました🥰お身体に気をつけて更新頑張ってください! (2月22日 0時) (レス) id: 40a9933e11 (このIDを非表示/違反報告)
おず(プロフ) - ononon245さん» コメントありがとうございます!以前のもの読んでくださったようで嬉しいです、ありがとうございます🥰スコ兄ということで大人っぽさ全開で書いてみています!楽しんでいただけると幸いです🥰 (2月9日 23時) (レス) id: 0e6497002e (このIDを非表示/違反報告)
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