2杯 ページ2
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お酒はいっぱい飲める方がかっこいいし、カルーアミルクやファジーネーブルなんかよりテキーラやイェーガーマイスターの方がかっこいい、チェイサーなんてダサくて、二日酔いはステータス。でも公共の場で吐くのはダサいし、家でだって吐くのはダサい。
「あ……」
翌日、私は無意識のうちに昨日と同じバーへと足を運んでいた。カウンター席の奥でロックグラスを揺らす昨日の、大柄の彼がいて、私は小さく声を漏らした。昨日は一緒に居たらしいブロンド髪の人はいなくて、一人。濃い茶髪に、アホ毛が揺れて、太い眉毛に、よく見えないけれど薄い目色。整った顔立ちではあるけれど、どこか荒々しくて、目が離せないの。
私は彼から離れているけれど、さりげなく視界に入る席に座った。お酒は好き、煙草も好き。そうなんだけど、1人では飲まないし1人では吸わない。名目だけのメニュー表を眺めながら、チラチラと彼を見る。
「注文は?」
何も頼まない私に痺れを切らしたようにマスターが私の前に立つ。酔えればなんだって良い、私は少し考えたあと答える。
「彼と同じものを」
「へえ、なかなか通なオーダーをするじゃないか」
なんだか満足そうに笑う初老のマスターは、荒削りの氷をロックグラスに入れて重厚な趣の酒瓶の栓を抜いた。暖かい色のカウンターライトに照らされたそのお酒は、風に揺らされて黄金の小麦のように輝くウイスキーで、芳醇な樽の香りと強烈なアルコール臭が漂う。
私は目の前に出されたウイスキーのロックを一口。アルコール度数で言えばテキーラとそう変わらない、でも味や風味や香りがキツすぎて少しむせてしまう。少しでも氷がとけて飲みやすくなるようにと、グラスを揺らして香りを楽しむふりをする。
ちらり、と彼を見ると目が合う。すぐに目を逸らされてしまったけれど、彼はグラスに残ったウイスキーを一気に飲みほして立ち上がった。そのままのそのそと歩き、私の横で立ち止まり、昨日と同じような低く威圧的な声で言う。
「おい、そこの。さっきからジロジロと俺の顔になにかついてるか?」
まさか声をかけられるとは思わなくて、私は咄嗟に声が出なかった。ふいと彼から顔を背けてツンと刺激的なウイスキーを口に含む。ごくりと苦いそれを飲み込んで、彼に言った。
「あら失礼、何を飲んでいたか気になったの」
「へえ、その割に進んでねえみたいだけど、口に合わなかったか?」
そう言って挑発的に笑いながら彼は隣の席に腰掛けた。
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おず(プロフ) - おしゃち!さん» コメントありがとうございます💕最後までご愛読頂いた上にそのように言っていただけて嬉しい限りです、ありがとうございます!これからも精進して参ります! (2月25日 11時) (レス) id: 0e6497002e (このIDを非表示/違反報告)
おしゃち! - 完結おめでとうございます!出会いによって人生が変わっていくドラマチックなストーリー、毎話ドキドキしながら読ませて頂きました。ラストの回収が見事過ぎて言葉が出ません🥲︎素敵な作品をありがとうございました!! (2月24日 1時) (レス) id: cebb1c38ee (このIDを非表示/違反報告)
おず(プロフ) - メイベルさん» コメントありがとうございます!一緒にスコ兄の底なし沼にハマりましょう!!アーサーの方も読んでくださりありがとうございます、更新もラストスパート切りましたので頑張ります!お付き合いいただけると幸いです😍 (2月22日 12時) (レス) id: 0e6497002e (このIDを非表示/違反報告)
メイベル - コメント失礼します!!大人っぽい雰囲気最高です!!元々好きでしたがもっとスコ兄に沼りました!アーサーの方の小説もとてもキュンキュンして読みました🥰お身体に気をつけて更新頑張ってください! (2月22日 0時) (レス) id: 40a9933e11 (このIDを非表示/違反報告)
おず(プロフ) - ononon245さん» コメントありがとうございます!以前のもの読んでくださったようで嬉しいです、ありがとうございます🥰スコ兄ということで大人っぽさ全開で書いてみています!楽しんでいただけると幸いです🥰 (2月9日 23時) (レス) id: 0e6497002e (このIDを非表示/違反報告)
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