三年間だけ女神さま (ページ1)

今日:1 hit、昨日:3 hit、合計:14,345 hit

三年間だけ女神さまページ1

.

あーぜんぶおわった

.

　バレーボールとは、いったい、なにが楽しくて、俺はやっていたのだろう。

「覚ちゃんておばけ映画好きなの」
「すきだよお」

　俺は、強さが好きだ。強いものが好きだし、自分が強ければ、何よりも心地いい。

　認められたくて、認められなくて、苦しかった。点とってんのに、俺だけの力で。何度も何度も何度もしんどいなって思ったことがある。でもやめられなかった。俺は何度も、なんどもその瞬間だけをひたすら、息を潜めて待っていた。そうしてやっと手に入れた俺の楽園の中には、いま、小さな女神さまがいる。

「さとりちゃん」
　ふふふ、と微笑むこの子の、やわらかい笑顔は平等に、多くの人に向けられている。それは、この子が女神様だからだ。

「んん？なになに」
　きみはこの楽園を統べたりしない。リーダーじゃない。やさしくて、美しく、清らかで、この楽園で自分の魂の芯を作った人だから。

　でも平等じゃない。

「ねえ今度さ、放課後にクリームソーダ飲みに行ったら怒られるかな、土曜日」
「え、なになに。Aちゃんワルになるの？」
「土曜日ね、予備校まで勉強しようかと思ったんだけど、クリームソーダ飲みたくなっちゃったから…」

　じゃあ若利君と行ってきなよ。

　あ、今の俺、冷たい。女神様に向かってひどい態度だ。誘われてもないくせに。よかった、心に止めといて。口に出して嫌われたくなんかない。
　きみは俺の楽園の女神さま。やさしくて、美しく、清らかだ。俺はそんなきみのことが好き。これは恋じゃない。もう俺の恋、終わっちゃったから。負け戦とかそういうレベルの話でもない。俺が勝手に信仰してるだけ。
「どこに飲みに行くの？」
「美味しいカフェが駅近にできたんだって。場所はいまいちわかんないけど徒歩1分っていうから…もうね、ちょうちょうちょう行きたいの！」

　俺、ついてってあげよっか。

共犯者になる提案に、Aちゃんはえっ、と口をついて驚いた。ついでに俺もびっくりした。だって口から出ちゃったんだもん。でもいーよね、俺若利君にどうしたって勝てねーもん。このくらい許されるよね。

「Aちゃんがそんなに言うから、俺も久々に飲みたくなっちゃった。クリームソーダ。責任とって？」
「ほんと？」