十話 ページ10
この学園の入学式はだいぶ変わっている。
「「ダンスパーティ!?」」
すっかり元気になったセンラさんと坂田さんが見開いた目で、校医さんに詰め寄っていった。
毎年抽選で決めるから、と若干引き気味でそう話す校医さんは派手なスーツに身を包んでいる。
時刻は午後6時を過ぎていて、パーティまで30分と満たない。
セ「聞いた事ないで、入学式がダンスパーティとか…」
坂「俺らスーツなんか持ってへんで、どうしよう!?」
セ「何でお前は受け入れてんねん!少しは違和感を((」
『スーツとか持ってきたよ〜』
セ「…え、俺が可笑しいの?これ」
何で用意してるの、という視線には気付かないフリをして、それぞれのイメージカラーに合わせたスーツを手渡す。
ゲームのオープニングで着ていたスーツなので、二人共絶対似合うはず。
早めに探しに行っといて良かった〜…
本当は二人自身が選ぶんだけど、そんな時間は無さそうだし。
入学式に出遅れたら、また何かしらの改変が起こってしまうかもしれない。
これ以上物語を歪ませない様にしないと。
セ「ていうか、Aはまだドレス選んでへんの?」
『うん、これから決めようかなって』
坂「じゃあ、僕が選んでいい?えーと…」
セ「A、これとか良くない?Aによく似合いそう」
坂「っておい!自分とお揃いにしようとすんなや!」
セ「たまたまやって、な?Aもこっちのドレスの方が良いやろ?」
坂「いや絶対こっちの方が似合う!Aもそう思うでしょ?」
『う、うーん…』
あらまぁ…じゃないんですよ、校医さん。
自分のは適当に引っ張り出してきたから、どんなのがあるのかなんて考えてなかった。
『わ、私このドレスにします!』
忘れてた、二人はよく喧嘩するんだった。
二人が互いに火花を散らし始めたので、私は慌てて適当に掴んだドレスを手に取り、近くのカーテンを閉めた。
校医さんの青春だわ〜…、という声は聞こえなかった事にしよう。うん。
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作成日時:2022年1月17日 5時