三十九話 ページ39
坂「そういえばセンラの住所って分かるん？」
志「先生を脅して聞き出した。多分あの辺りやな」
坂「脅したって……あれ？まだ動いてるんや」
絨毯を操る坂田の視線を追うと、そこには数年前に倒産した廃工場があった。
何故か稼働している為、不信感を覚えるが取り敢えず今はセンラの家へ向かわなければ。
視線を前に戻す直前、視界の端で黄色の何かが見えた。
慌てて振り返るがもう遅く、再び見つける事は出来ない。
…まぁセンラじゃないやろ。
志麻は坂田の腰に手を回し、絨毯の揺れに身を任せた。
*
センラの家へ着き、チャイムを鳴らすが一向に出てくる気配がない。
不審に思ってドアノブを回すと、それは何の抵抗もなく開いた。
慌てて中へ入った二人はガランとした空間に唖然とする。
坂「どうしようまーしぃ！センラがいいひん！」
志「落ち着け坂田、荒らされた様子は無い。恐らく鍵の閉め忘れや、入れ違いになったんやろ」
坂「センラに限ってそんなうっかりする…？」
志「まだ精神的に不安定ならあり得る。もう少しここで待とう……おい何漁ってんねん」
坂「いや、何か変な気配がして」
魔力を感じ取れない志麻には解らないが、坂田は不穏な気配と歪な魔力の匂いを感じ取っていた。
部屋を漁る坂田を止めようとすると、ふいに彼の動きが止まる。
坂田の手にある写真を見て、志麻は思わず目を見開いた。
志「これ、センラか…？」
坂「しかもこの写真、凄い怨念が込められてる。多分センラの魔力やで…」
写真には力なく横たわるセンラの姿があるが、その腕や足の関節部分に人形の様な球体が埋め込まれていた。
からくり人形の様な姿で、瞳の部分は空洞になっており、糸で持ち上げられている。
背筋が冷えるのを感じながら、志麻は他の写真にも目を配った。
その他の写真にもセンラの人形の様な姿が写っており、一枚の写真にはセンラの隣に白衣を着た男性が映っていた。
志「折原博士…さっきの工場の持ち主やな。てことはあの違法工場とセンラは関係があったって事か…」
坂「折原ってセンラの名字やったし、祖父なんかな？…でもこんな強い怨念を抱く相手って……」
志「…それはセンラしか知らんやろ。さっきの工場に向かうで」
坂「ここで待つんちゃうん？」
志「ここに向かう途中センラっぽいのを見かけたんや。工場辺りやった気がする」
坂「なんでそれを先言わんの!?も〜…急ぐで」
坂田の絨毯は爆速で来た道を引き返した。
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作成日時：2022年1月17日 5時
