三十六話 ページ36
物語中盤のメインである団との戦闘はもうすぐ始まりを迎えようとしている。
会場を襲って数人の生徒の死亡と共に団のボスが姿を表すのだ。
ここで初めてプレイヤーはこの世界の悪役を知ることになる。
坂「浮かない顔やけどどうしたん?」
『ん?なんでもないよ(これからテロで何人か死にますなんて言えねぇ)』
他人の変化に鋭い坂田さんにひやひやしつつ、特製ドリンクを飲み干した。
すると会場が暗くなり、照明がステージを照らす。
会場中の視線がステージ上の箱に集まる。
好奇心や希望、そして興奮の視線の中、その箱は開かれた。
「い、いやあああああああ」
「何だあれ…本物か⁉」
箱の中にはぎゅうぎゅうに詰め込まれた人間の手足があった。
その数は一人二人の量ではない。
会場内がパニックに陥った所でマイクが通る。
【食頂大会にお集まりの皆様、どうも初めまして。我々は崇高なる世界の使者カバツ団と申します。以後お見知りおきを】
綺麗にお辞儀した彼に教師陣が魔法を放つ。
しかし彼がもう一度箱を開けると、魔法は全て箱の中に吸い取られてしまった。
再び箱を開けて魔法を返される、会場の方に。
その全魔法を浦田さんが消し去ると、男は恨めしい顔を晒した。
が、すぐに笑顔を貼り付ける。
【流石はNKSG学園の生徒様だ、面構えが違いますね。このまま放っておけばいつか私達の邪魔になるでしょう…】
男が箱に手をかける。
浦田さんが近付くも間に合わず、開いた箱はあらゆる物を吸い込み始めた。
グラスやテーブルは勿論、人でさえ箱は飲み込み始める。
坂「A!センラも離したらあかんで!」
セ「…志麻さんもしっかり捕まって下さい!」
志「でも箱閉めないと全滅やで、これ…!」
箱に飲み込まれると押し潰される為、人が吸い込まれる度に血が吹き出ていた。
吸引の威力は凄まじく、浦田さんでさえ迂闊には近付けないが志麻さんの言う通り、このままでは全滅だ。
『(でも直ぐに詰まるから止まるんだよね)』
そんな事を考えながら男を見ていると、ふいに男と目が合った。
そして男はニヤリと笑い、此方に手を向けると、私の体は宙に浮いて上を登り始めた。
上を見れば同じ様な箱が空間に現れている。
…こんなのあったっけ?
寸での所で壁の突起物を掴み、中に吸い込まれるのを食い止める。
志セ「「A!」」
脱げた靴が箱の中で容易く歪むのを見て、冷や汗がつーっと流れた。
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作成日時:2022年1月17日 5時