三十四話 ページ34
《さぁ続いての料理は秋の味覚!モンブランだ〜!》
「モンブラン?今の時期に?」
「見た目もあんまりパッとしないな」
何とか自分の番までに間に合ったものの、会場の反応はイマイチだ。
けれど私は堂々と料理を審査員の前に置いていく。
あの倍率で合格出来たんだ。きっと大丈夫な筈…!
《では試食の方に参りましょう!審査員の方々、お手元のスプーンをお取り下さい》
審査員がそれぞれスプーンを手に取る。
殆どがじっくりと見た目を観察した後、目を閉じて口に運んだ。
しかし一人だけ口に入れず、スプーンを置いた人がいる。
「これは普通のモンブランです。一流のシェフが作った訳でも、贅沢な果物が使われている訳でもない。只のモンブラン、食べるに値しませんわ」
《おっと!審査員のミス・チョコーヌが拒絶を表したァ!モンブランはやはり季節外れかァ!?》
「儂もこれは好かん。こんな陳腐な花一つで食欲を唆ろうなどとは言語道断じゃ!」
《ミスター・ドーナナッツはスプーンを突き刺したァ!!これはかなりの判定がついてしまう!》
…今分かった気がする。
私が受かったのは先生による最後のチャンスだったんだ。
思えば誘拐されてからというもの授業にも全く出られてない為、評価は当然零に等しい。
先生が挽回のチャンスをしっかり与えてくれたんだ。でも私は…
《さぁ、それでは審査に参りましょう!先程は散々な言われようでしたが、評価は最後まで分かりませんよ〜?》
『(嫌味かな、この人)』
《ジャラララララン♪ーーな、なんと過去最低の10点だー!!》
「じ、10点だって!?」
「なんで合格出来たんだアイツ!?」
会場中がざわざわと揺らぎ始まる。
私も驚いた。あのモンブランに満点の10点を投票してくれた先生に。
「フフッ贔屓は良くないですわよ、エリダリーヌ先生」
「いいえ、チョコーヌ先生。決して贔屓ではないですわ。私は公平な立場からこのモンブランが一番優れていると思いましたの」
「ほぅ…その理由を聞かせて貰っても…?」
「スイーツにはそれぞれメッセージがありますの、花言葉の様にね。モンブランは確かに季節外れですが、そのメッセージは冬の方が相応しいのよ?」
唖然としていた審査員達は目で促す、そのメッセージを言えと。
しかし先生はただ微笑むだけで何も言わなかった。
知ってるはずよ?審査員ですもの。
とでも言いたげに。
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作成日時:2022年1月17日 5時