二十九話 ページ29
あれから月日が経って大会は一週間後となったので、現在私はセンラさんの家にお邪魔しています。
私を見るなり手厚く(?)歓迎して下さったセンラさんは、今もキッチンで頭を抱えたり溜息を吐き続けたりしている。
彼の目の前には、先程私が作ったモンブラン。
味も見た目も不気味なソレにセンラさんはガックシと肩を落としていた。
セ「A、あの学園が脱落形式なのは知ってる?成績のワースト30位以内の生徒は退学処分になんねんで?」
『知ってます、なので今日はモンブランのレシピを教えて貰いに来ました!』
セ「(……これモンブランなん…!?)」
そう言うと、またもやフリーズしてしまったセンラさん。
その様子に少し申し訳なく感じてしまうが、実はセンラさん家に集まったのには理由がある。
先月話せなかった城での出来事を私は、志麻さんに悟られる事なく誰かに伝えなければいけない。
あの日から数週間ことごとく邪魔されてきたけれど、ようやく邪魔の入らない空間を手に入れる事が出来たのだ。
となればする事は一つ。
『センラさん落ち着いて聞いて欲しいんですが……』
セ「ん、どうしたん?……あ、まーしぃからや」
『ヒョエ…』
セ「"明日の放課後空いてる?"って。…で何やったっけ?」
『いや、いいです。気にしないで下さい』
引きつった笑みを浮かべ、冷や汗が流れるのを肌で感じる。
え、監視されてる?もしかして。
そういえばあの時見逃されてたっけ…?
あれはお情けなんかじゃなくて、発信器や盗聴器みたいな魔法をかけて泳がせる為だった!?
『(そ、そんな馬鹿な…!)』
セ「(何か凄い悩んでる…)明日遊びたいんやったら、今日中にモンブランは完璧に仕上げなあかんで!」
『うぅ…了解、ママ』
セ「ママやめい」
その後センラさんの分かりやすい説明のお陰で、何とか夜までにオリジナルのモンブランが出来上がった。
味も合格を貰い、センラさんから教えてもらったレシピを纏めてその日は夢に落ちる。
何だか良い夢を見れる様な気がした。
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作成日時:2022年1月17日 5時