二十八話 ページ28
『…あれ…ここは?』
坂「A!大丈夫!?…おーい!Aが目覚ましたで!!」
セ「A…!!」
『うぐ……く、苦しいです…』
真っ白な天井と馴染みのある髪色を認識した途端、二人から熱いハグをプレゼントされた。
ワァーイイニオイガスルナー(鼻血)
浦「おい落ち着け、死にかけてんぞソイツ」
坂「え、死にかけてんの!?A大丈夫!?」
セ「どうしよう、Aの鼻から血が止まらへん…!!」
浦「うん、取り敢えず離れろ」
私の肩に引っ付いていた二人はメリメリと引き剥がされ、浦田さんは内ポケットからカルテ代わりなのか緑色のメモ帳を取り出す。
暫くして怪我や後遺症等が無い事を確認すると、浦田さんは一体何が起こったのか、出来る範囲で答えてほしいと様々な質問をしてきた。
誰の仕業か、何処に連れ去られたのか、などの質問を順調に答え、最後の質問に差し掛かった時、私は答えを喉の奥に押し戻す。
浦「じゃあその城?では何があったんだ?」
『…城では志m((』
志「あれ、Aちゃんもう目覚めたん?ちょうど良かった、アイスいる?」
『だ、大丈夫です!!お気遣いなく!!!』
坂「ちょ、それ僕が置いといたアイス!」
セ「あ、食べたかった奴やん!」
志「共有の冷蔵庫に置いとく方が悪いんやで」
浦「お前らいい加減に……!?それ俺のモ○カだろ!おいまーしぃ!」
袋を開き、丸腰のアイスが志麻さんの手元に留まると、室内は阿鼻叫喚の地獄へと瞬く間に変わる。
…危なかった〜…
ドクドクとかなりの速度で波打つ鼓動は、室内よりも煩く耳に響いた。
*
結局アイスを取り返せたのは浦田さんだけで、残りの二人はぜぇぜぇと言いながら床にへばっている。
二人分のアイスを美味しそうに食べる志麻さんはとても冷酷な人には見えない。
もしかしたら人違いだった可能性も…いや駄目だ、今はどうやって城での出来事を伝えればいいのかを考えないと!
志「やっぱりアイス美味しいな、今年の食頂大会はアイスにしよ」
坂「食頂大会?何それ」
浦「毎年行われる料理の出来を競い合う大会のこと。宝探しとは違って個人戦だから何作るか早めに決めておかねぇとヤバイ事になるぞ」
セ「因みにその大会っていつ頃なんですか?」
志「大体夏休み前にやってるから、一ヶ月後くらいじゃね?」
生徒が誘拐されているのにイベントをするなんて、何処まで自由なんだろうかこの学園。
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作成日時:2022年1月17日 5時