二十四話 ページ24
『ん…ここは…?』
痛む頭を抑えながら立ち上がったそこは、深い霧に包まれた森の中だった。
これまでの経緯を辿ろうと頭を捻ってみても、出てくるのは最後に殴られた記憶のみ。
どうやって出るのか。ここは何処なのか。
さっぱり検討もつかなかった。
『と、取り敢えず出口を探そう。思い出すのはその後!』
バシッと頬を叩いて湿気が充満する深い森の中、草木を掻き分け進んでいく。
暫く歩いてふと振り返れば、元来た道が霧で見えなくなっており、段々霧が濃くなっていた事に気がついた。
もしかしたら出口とは逆方向に向かっているのかもしれない…。
『(この道をまた歩くのはなぁ…)』
?「………!……」
?「…?……!……?」
『(…声?)』
思わず息を潜め、耳を澄ましながらかがみ込む。
声は段々と此方に近づいてくるが、静かにしていたおかげで何とか気付かれずに済んだ様だった。
『(今、何でバレたら不味いって緊張したんだろ…?山で遭難した私を助けに来てくれたのかもしれないのに…)』
思わず硬直した自身の身体に若干疑問を残しつつ、来た道を戻ろう。
そう踵を返した次の瞬間、先程と同じ声が霧の中に響き渡った。
?「捕らえてた生徒が逃げ出したぞ!必ず探し出せ!」
了解、そんな複数人の野太い掛け声が聞こえてきたかと思えば、直後もの凄い足音が此方に向かってくる。
勢いはロードローラーにも勝るほどで流石に隠れてはおれず、慌てて音とは逆方向、つまり霧の濃い方に走り出した。
『(建物…!?失礼しまーす!!!)』
突然霧の中から現れた黒い建物に慌てて駆け込み、悲鳴を上げる心臓を何とか落ち着かせようとゆっくり呼吸する。
足音の集団は建物の前でピタリと止まり、恐らくリーダーの一言で二手に分かれて離れていった。
何故か建物に入らなかった事に違和感と途轍もない脱力感を感じる。
ホッと胸を撫で下ろし、改めて建物内部を見てみると、明るく輝く出口に続くやや長めな廊下が視界に写った。
『(もしかして出口?良かった〜…)』
へなへなと体の緊張を解きながら、長く薄暗い廊下を歩き始めたが、緊張解くにはまだ早かったらしい。
ガシャンッと無機質な施錠音が背後から聞こえ、思わず振り返ると、今さっき入ってきた入口が無慈悲にも閉ざされている。
そして光の方からは集団の足音。
『(私もしかしてアジト的な場所に入っちゃった…?)』
彼女が森を抜けるのはまだまだ先になるのかもしれない…
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作成日時:2022年1月17日 5時