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二十ニ話 ページ22

『先回りしといて良かったかも…』


窓の外で起こっている激しい攻防戦を見て、思わずそう声に出してしまう。

学年ごとに取れる宝石が違うという追加ルールがゲーム通りに隠されていたのには少し安心した。

強奪が許可されている以上、誰かと奪い合いなんて出来る限り避けたい。


『(今持ってるので充分だけど、もう少し探してみようかな)』


そう思い、その場で暫く探していると何処からか足音が聞こえてきた。


『(え、もう誰か来たの!?早く隠れなきゃ…!)』


慌ててロッカーに入り、音を立てないよう静かに扉を閉める。

耳を澄ますとドクドクと鼓動がうるさかったが、ようやく落ち着いてきて、足音が自分のいる教室の前で止まった事に気づいた。


『(バレてはいないけど、ここで探すつもりなの?詰むんだが?)』


出ていってくれー、と心の中で念じつつ、諦めかけていた瞬間、聞こえた言葉に身体が強張る。


?「あれ?誰もいないンゴ。悪魔の子?の居場所を聞こうと思ったんだけどンゴ…」


"悪魔の子"はルシファーの子孫である浦田さんを指す言葉。

そしてその名前が本編で使われていたのは、裏社会…敵同士の会話だけ。


『(声だけじゃ判断出来ないけれど、語尾に"ンゴ"が付く人物は本編でも一人しかいない)』


カバツ団三銃士の一人、マーシャル・マートル、物語の最終局面で倒す敵の幹部だ。

こんな序盤出てきていい人物じゃないし、ここのセキュリティゆるすぎじゃない?

というか明らかに物語が歪んできてしまっている。


マ「スンスン…やっぱり誰かいるンゴね!隠れてないで出てきて欲しいンゴ!」

『(絶 対 い や)』


そんな喋り方をしても私は騙されませんよ、ゲームで仲間を生贄にパワーアップする戦い方は何度も見てきましたからね。

そして何回も負かされるから、個人的に凄い嫌いです。

でもちょっと不味いかも、匂いで探す事が出来るのは想定外だった。


マ「スンスン…こっちからするンゴ。ん…!?近い!近いンゴ!!」

『(いや怖い怖い、こっち来んな)』


マートルの気配はすぐそばまで迫ってきており、心なしか荒い鼻息まで聞こえてくる。


みーつけたンゴ♪


扉が開かれて目に入る、此方を見ながらにんまりと微笑む巨漢の姿。

合わせた視線は外れず、掠れた声しか絞り出せない。


マ「お話、してくれるンゴ?」


伸びてきた腕が私の視界を覆い尽くしたとき、私は悟った。

この暗闇に逃げ場なんて最初から無かったんだと。

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設定タグ:usss , 浦島坂田船 , 歌い手   
作品ジャンル:ファンタジー
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作成日時:2022年1月17日 5時

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