十九話 ページ19
あの日から五日が経ち、私達は今学年混合授業とやらの準備をしています。
学年混合という事でとても大掛かりな仕事です。
先輩方もヘロヘロになって屍の様に寝転がっています。
しかし、一部を除いて。
坂「〜♪」
セ「(黙々と作業中)」
志「…よいしょっと」
浦「やまだ、釘出してくれる?ん、サンキュ」
坂田さんは鼻歌混じりで作業し、センラさんの動きには全くと言っていい程無駄がない。
志麻さんは自分より大きい鉄球を持ち上げてますし、浦田さんは仕上げの作業を一人で完璧にこなしています。
ゲームではあまり意識していなかったけれど、改めて彼らの異常さに気付かされてしまった。
この四人に追いつけていた主人公って一体…?
「ば、化け物かよ。アイツら…」
「あの赤髪と金髪に至ってはまだ一年だろ?俺どんな顔したらいいか分かんねぇよ…」
『先輩方お疲れ様です、お水どうぞ』
「お、ありがとう。助かる」
「プハーッ生き返るー!!」
喜んで貰えて良かった、とホッと胸を撫でおろす。
四人にも渡そうと向き直ったが、集中を途切れさすのも悪い気がして休んでいる時に渡そうと、ペットボトルをテントの中に置いておいた。
手伝いたいけど逆に邪魔してしまう様な気がして、近くのベンチに腰掛ける。
『(学年混合授業…)』
魔法士にとって連携が取れる事は最低限の能力であり、必須事項な為、その練習として、この授業は毎年欠かさず行われている。
ゲーム通りであれば、内容は宝探しみたいなもので学園内に隠された宝石を探すだったと思う。
確か、三年生が一人、二年生が二人、一年生が二人のグループに分けられるんだっけ?
ゲームでは文字とイラストでしか描かれていなかったので、実際に体験するのは楽しみで仕方ない…!
『(どんな感じになるんだろう…!)』
胸を高鳴らせて明日が来るのを今か今かと待つ。
でもこの時の私は知らなかった。
物語の行く末が既に大きく歪み始めている事に。
「なぁマスター。今の電話なんだと思うンゴ?」
さぁ、ととぼけるマスターに男はケタケタと笑いながら銃を突き立てる。
「当てられたら見逃してやるンゴ」
「あ、暗殺の依頼…」
せいか〜い、と男が言ったその時店内に銃声が響き渡る。
「やっぱり聞いてんじゃンゴ」
動かなくなったマスターを横目に男はウイスキーを飲む。
「悪魔の愛し子はどんな味がするンゴ?」
赤く染まったウイスキーを眺めながら男は心底楽しそうに微笑んだ。
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作成日時:2022年1月17日 5時