十七話 ページ17
?「PAMの皆さん、捕まったそうです。やっぱりもっと腕の立つ奴を雇った方が良かったのでは?」
?「雇った所であの"悪魔の愛し子"には敵わん。今回は力試し。まぁ、想像以上の強さだったがな…」
問題ない、と一人の男はそう呟いて微笑んだ。
悪魔から寵愛を受けし、浦田 渉と名付けられたその青年は、額縁の中から此方をジッと見つめている。
そして、暫くして青年から目を離した男に、もう一人の男が問いかけた。
?「この神秘的な世界に悪魔の血は要りません。ですが…安易に滅ぼせないのも事実。我らカバツ団には貴方達の力が必要なのです」
?「分かってるさ、策はある。…所詮は人間、戦い方の癖、思考経路、優先順位は簡単に変えられない」
?「…期待してますよ、"月崎志麻"様」
志「……あぁ…」
月崎、という名字に少し顔をしかめるも、男はもう一人に振り返って、ニヤリと嘲笑うのだった。
*
「休むんじゃありませんわ!!ミス・A!!」
『は、はいぃ…!!』
皆が次々と種目をクリアしていく中、私だけ初めの"跳び箱25段"に躓いていた。
踏み込めば顔面強打、動きが少しでも止まれば先生からの圧迫は免れない。
『(何で身体能力は転生前と同じなの…!?)』
原作通りでは、サクサクとクリア出来ていた筈の体力テスト。
これでは改変どころの話じゃなくなってしまう…!!
「ハッ、危ない…!!」
『へ?……フゴォ!!』
焦った様に此方を見た先生。
何事かと立ち止まった私の後頭部に強い衝撃が走る。
意識が朦朧として、走り寄ってくる先生の顔がぐにゃぐにゃと歪み始めた。
『(駄目…だ……瞼が…お…もい……)』
―――プツン――
「A、美味しい?」
『うん!美味しいよ!』
「そう…なら良かったわ…!」
ビーフシチューを母と食べたあの日、私は初めて母の笑顔を知った。
優しさに溢れている笑顔だった。
その表情を見てると自然と私も笑顔になって…
『(嗚呼、会いたいなお母さん…)』
死んでしまった私にはもう無理な話だけど、せめて感謝だけでも伝えたい。
世界は違うけど、きっとあの世では待っていてくれるよね?
気がつけば私は母と一緒に公園に来ていた。
幼い私を静かに見守る母。
そろそろ帰りましょう、そう言った母が私の手を優しく握る。
私もついていこうと一歩踏み出したその時だった。
ガシッと腕を掴まれる。
ギリギリと強まる力に思わず立ち止まる。
?「待って」
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作成日時:2022年1月17日 5時