十二話 ページ12
？「ごめん、大丈夫だったか？」
『…はい(死ぬかと思った…)』
突然会場の外に出されたかと思えば、見えない壁にめり込まされるんですよ。
しかも青年の胸筋と挟まれて……色々な意味で死んでしまいます。
ふらふらと立ち上がり、目の前の青年を見る。
少しハネ気味の茶髪にエメラルドの瞳、そして肩に乗った狸ちゃん。
『(う、浦田さん…!?)』
固まった私を見て首を傾げている彼は浦田 渉。
この学園の生徒会長でもあり、ルシファー一族の長でもある超エリート高校生だ。
魔力や体術は勿論、知識も多く兼ね備えており、作中で五本指に入る程の実力者である。
あまりにも強すぎるので、ボス戦には参加出来ないルールが足されたんだったな…
浦「外に出せたのは12人だけか…」
『12人？』
浦田さんの目線を辿れば、そこには12人の新入生達が倒れていた。
ん？12人？
『私はまだ出られてないんですか？』
浦「結界が張られて間に合わなかった。多分これをどうにかしないと今夜は帰れないぞ」
これ、と彼が見えない壁をノックすると、ゴンゴンと明らかに薄くない音が響く。
流石の浦田さんでも、こんなに分厚いと簡単には壊せないらしい。
『じ、じゃあこの壁を壊す方法はもう無いんですか？』
浦「いや、結界を作った奴をぶん殴れば壊せる。ただ……そいつは多分結界の外にいる」
『(詰んでないか、それ？)』
浦「教師も在学生も皆会場で眠ってる今、結界外で戦えるのは寝てるそいつらだけだ」
『皆起きてー!!朝だよー!!!』
夜だけどな、というツッコミは無視して、ぜぇぜぇと息を乱す。
散々叫んで喉を痛めたが、彼らが起きる様子はない。
浦「音も遮断されてるな、侵入者は少なくとも二人以上……やっぱり中の奴を人質に脅すしかないのか…？」
『…私だったら人質見捨てて、結界を強化します』
浦「まぁ、あまり期待はできないよな…」
八方塞がりに溜息をつく浦田さん。レアだ。
という場違いな考えを振り払おうと頭を振ると、何かに気がついた彼があ、と声を上げる。
浦「まーしぃ…!!」
『まーしぃ？………あ、志麻さん！』
志「―?――!」
浦「クソ、声が…！て、お前何して」
――キュキュッ―
透明な結界を息で曇らせ、曇ったそこに反転させた文字を書く。
良かった、ゲーム内の言語が日本語で…!!
浦田さんも意図を理解したのか、直ぐに反転した文字を書き始める。
でも二人して遊んでいると思った志麻さんは大爆笑していた。解せぬ。
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作成日時：2022年1月17日 5時
