after44 降谷side ページ5
沖矢昴が家から出て、僕は彼のいそうな二階の寝室に向かった
二階の寝室の扉は少し開いていた
それを音をたてずゆっくりと開け、中を見る
そこに映るのはベッドの前で片膝を抱え心ここに在らずの彼の姿だった
彼はボーッとベッドの端に頭を乗せ何もない天井を眺めていた
僕が入ってきたことさえ気付いていない
「A、さん・・・」
呼び掛けても返事は無かった
ずっと無言だった
僕は彼にかける言葉を必死に探した
でも見つからない
「・・・大切なものは全部すり抜けて行く」
彼が少しずつ喋る
下を向き自分の手を開いて見つめながら
「手に入れたものさえすり抜けて行くんだ」
それは僕に向けた言葉ではなく、独り言のようだった
「いつもそうだ、結局俺は守れないんだ。何一つ」
彼の言葉の一つ一つが胸に刺さる
こんなに彼が弱っているのに、泣きたいのに
俺はどれだけ非力なんだ
少しずつ少しずつ彼に近付いて行き
彼の膝上を跨ぎ彼を見下ろすように立つ
両手を彼の頬に添える
そうすれば上を向く彼の顔
その瞳には何も映っていなかった
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作成日時:2016年6月4日 8時