9と3/4番線 ページ5
駅に着くと、真名部さんはもういた。さすがである。
「おはようございます、A、皆帆くん」
「おはようございます」
「おはよう、真名部くん」
真名部さんのスーツケースには、ラベンダー色のフクロウ、ナナセが大人しくとまっていた。うちのルルとは大違いで、思わずルルを見ると、首を傾げる金色の瞳と目が合った。
元気さも、可愛さも、うちの子が一番、再確認した。
心の中でルルを愛でながら、駅の中に入った。
ホグワーツ行きの電車が出るのは、9と3/4番線。もちろん、マグルたちが知るはずもない番線である。
なんていったって、そこまでの行き方がマグルたちには想像もつかないほど飛び抜けている。9番と10番の間の柵に突っ込むのだ。
それだけならマグルがホグワーツに来てしまうんじゃないかと考えたが、そうではないらしい。立ち止まったりぶつかったりするんじゃないか、と怯えている人は柵をくぐり抜けられないからだ。
これがお父さんとお母さんという経験者から聞いた話なので、間違いはないと思うし、信じられる。現に、お兄ちゃんと真名部さんはもう柵に突っ込み、9と3/4番線に行った。
でも、怖いものは怖い。ぎゅっと目を閉じ、何度も深呼吸をして、私は柵に突っ込んで行った。
「A、ここ開いてるよ」
目を開けると、プラットホームに赤色の電車が停車していて、その窓からひらひらとお兄ちゃんが手を振っていた。
通り抜けられたと安心しながら電車に乗り、お兄ちゃんと真名部さんが取っておいてくれた席に座った。
間もなく電車が発車して、景色が流れてゆく。二人と世間話をしていると、
「うるせぇ、犯罪者が口答えするんじゃねぇ!!」
誰かの怒号が飛び、何かが倒れるような音がした。
「...お兄ちゃん、ちょっと行ってくるね」
正直言って、迷惑な大声はバッチリ控えてほしい。真名部さんも顔をしかめている。
椅子から立ち上がった私に、
「やり過ぎないようにね」
お兄ちゃんはにっこり笑った。
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作者名：アリス | 作成日時：2021年1月19日 20時
