2話 炭売り ページ4
「おっ、Aと炭次郎じゃあないか。相変わらず、Aは美人だね」
私を見て、町の人はニコニコと笑った。
「やっぱり、そうして二人で並んでいると、恋仲にしか見えないなあ」
「まっさかぁ。ないですよ」
町の人達は、こうしていつもからかってくる。私の言葉に、町の人は何故か遠い目をした。
「...こりゃ、炭次郎は大変だね」
ぬ?と首を傾げると同時に、色々なところから声がかかった。
「おーい、炭を売ってくれ」
「こっちにも」
「少しこの荷物を運んでくれないか」
いつも、炭売りの延長でなんかの雑用をやるのは、もはや恒例行事だ。
「炭、全部売れそうだね」
「花子達、喜ぶぞ」
二人で顔を輝かせ、仕事にあたった。
「まさか、本当に全部売れるとはね」
「Aが頑張ったからだよ、ありがとな」
行きは重かった荷物も、今は軽い。二人で話をしながら歩いていると、下の方から声がかかった。
「おーい、二人とも、今から山へ行くつもりか?」
「はい、そうです」
「危ねえから、うちへ泊まっていけ」
「いや、でも...」
「鬼が出るぞ」
有無を言わせない三郎おじさんの言葉に、私達は黙って頷いた。
「...昔から、人喰い鬼は日が暮れるとうろつき出す。だから夜歩き回るもんじゃねえ。明日早起きして帰りゃ良いさ」
三郎おじさんの話は、とても現実味がない、まるで、お伽噺の様な話だ。
「鬼は、家の中に入って来ないんですか?」
「いや、入って来る」
私の視界は、段々おぼろげになって来た。今日の炭売りで疲れた様で、瞼が少しずつ下がっている。
「...でも、大丈夫だ。鬼狩り様が鬼を斬ってくれるんだよ。昔から...」
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アリス - ミライノミチさん» ありがとうございます。とても励みになります。そのうち恋愛を増やしていくので、待って頂けたら泣いてバック転して喜びます。 (2020年11月23日 17時) (レス) id: e28dd41caa (このIDを非表示/違反報告)
ミライノミチ - 面白いです。いつも更新楽しみにしております。これからも頑張ってください。 (2020年11月23日 14時) (レス) id: 6244c3b093 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アリス | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/EHL/
作成日時:2020年10月17日 15時