はるがよっつ ページ6
─
私が皆に向けて言い終えると、教室内が拍手の音で一杯になった。
「……私からも言って大丈夫ですか？先生」
「はい、勿論」
ありがとうございます、と言った母さんに向き直った。
「────────遙香。」
「こちらこそ、私こそ遙香に感謝したい。
女だけの手で育てて、何かと不自由や不安を感じさせたこともあっただろうに、自分の道を歩みだして、さっき皆に言ったみたいな立派な夢をもってくれた。
産まれてきてくれてありがとう。
遙香は、私の誇りです。
自慢の娘です。」
ハッキリした芯の通った、けど日だまりのように優しい声と、笑み。
……あ、ダメだこれ無理。
手で押さえた下から温かい水が溢れた。
「え？佐賀美泣いてんの？え泣いてんの？」
「うるざいごばやしだまれ！！」
「理不尽！」
野次に鼻声で怒鳴り返すと口が悪い。とぺんと頭をはたかれた。
押さえるのが無理になって、手を外して盛大に泣いた。
こんな時くらい、素直になっても良いんじゃないかと思う。
気持ち悪いくらいに。
────────大好きだ。
母さんが、このクラスの皆が。
涙に交ぜて、そんな言葉を落とした。
＊
＊＊
「───────ってことで、諸君。
今日は盛大に羽目を外そう！！」
「「「え、しないし」」」
「そこは乗ろうぜ薙刀部三人衆」
しづと、他二人のクラスメイトの塩対応に委員長が項垂れる。
しづは中高6年ずっと薙刀部で、そこそこの成績を修めてたけど大学に行ったらすっぱり止めるらしくちょっと勿体無い。
あとここだけの話だが、彼女ら三人は秀央三大美姫とも言われてる。
いつの間にか出来てたファンクラブによると、
全国模試毎回一桁のしづは『賢姫』、
薙刀で全国大会出場、他にも日本文化の習い事を制覇してる『淑姫』、
秀央高校で何かが起これば誰もがまず頼る生徒会長『仁姫』。
中国の後宮で用いられてた名称をアレンジしたらしい。よくそんなん考え付くもんだ。
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作者名：camellia | 作成日時：2021年3月10日 9時
