て ページ32
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脳の隅々までその意味を理解してから、どっと涙が溢れ落ちる。
そう言えば、もう随分前から泣いてなかった。
母さんも居たけど、遙香が先ず真っ先に頼るのは私で、それに答えたくて強く在ろうとして。
その遙香も自立して、もう、そうである必要もないんだ。
──────なあ、良いだろう？
今のこの瞬間で、終わりにするから。
泣いても、いいだろ？
嗚咽の代わりに時折笑みを、涙と一緒に落として、気の済むまで笑った。
少しして漸く、目尻から溢れる水が途絶えた。
もしも、を。
一度くらい、アイツが犯罪者でなかったら、その状態で出逢えたら、なんて思ったこともあるけど。
その世界では、こんな感情だって味わえなかったかもしれない。
自分の身全てが、世界が、愛おしい。
これだけ慈愛に満ちていられるなんて、私はやっぱり幸せ者だ。
私と彼が出逢えた、遙香と出逢えたこの世界の全てが愛しくてたまらない。
満ち足りて澄んだ心地で、窓辺の白い花を見つめる。
そして一つ、決めた。
この花を一輪ずつ押し花にして、片方を遙香に贈ろう。
私からの、愛も込めて。
プリムラ・シネンシスの花言葉:永遠の愛
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作者名：camellia | 作成日時：2021年3月10日 9時
