はるがふたつ ページ4
─
『……“行きたい道を行けば良い。但し、”
“自分を、自分で誇りに思えるようになれ。”
その言葉を、忘れません。』
『最後になりますが、言わせてください。
─────部活の仲間に、見守ってくださった先生方に、何より、3年間を共に過ごした同級生に。』
マイクから、半歩退いて。
「─────ありがとうございました！」
あらんかぎりの声で叫び、結んだ髪が教壇を打つほどの勢いで頭を下げた。
一瞬のざわっとした空気の後、微かな笑いがあちこちから溢れ落ちる。
緩やかな拍手の波が押し寄せてきた。
『卒業生、代表。
3年特A組、佐賀美遙香』
今度は形式通りの礼をし、降壇。
＊
＊＊
式が終わって退場し、教室に入った瞬間。
「佐賀美ぃぃぃーーー！！！
お前ごのやろ泣かせんなよぉ……」
絶対泣かねえ、と豪語してた男子が顔を涙でぐっちゃぐちゃにしてるのを見て全員が弾けるように笑った。
「遙香、お疲れさん。最っ高だったよ」
「あんがと、しづ」
しづってのは勿論、紫月のニックネームだ。
「じゃあ最後に、皆から前に出て一言ずつ。
何でも良いから話してください」
友美先生が言い、出席番号が最初のしづが前に出た。
その間に、他のクラスメイトの親さんがしずしずと教室に入って、後方で見守っている。
「えーと……うん、皆多分落ち着いて聞けないっしょ今？」
確かに。
「なんで、積もる話は同窓会の時にってことで。
挫けないように、夢だけ宣言しときます。
私は、弁護士になります！！
あ、後の皆は私のこと気にしなくて良いから話してってね、終わり！」
彼女らしい、カラリとしたあいさつだった。
私の前の男子が官僚目指します、以上！と相当デカい目標を言って拍手を受けながら帰ってきたので立とうとすると、しづに止められた。
「遙香は真打なんだから、ラスト！
はい次行って行ってー。」
「はーいー」
真打っておい。時代劇か
その後も滞りなく済んだが、やはり最後は私と謎に推された。
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作者名：camellia | 作成日時：2021年3月10日 9時
