こはるがよっつ ページ14
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この世に生まれ出でた以上、やはり私にも父親というモノが存在するのだろう。
そんなことを前々から考えてはいた。
…………そしてその、遺伝子上私の何割かを構成するDNAの基になったその男が、(絶対父とは呼んでやらない)
毎年玄関先に薔薇を贈り、決して少なくない額を振り込み続けている、その人らしいと分かった。
端々がやたら曖昧な言い回しなのは、私も確信を持ったのはつい最近だから。
そして迎えた十四歳の誕生日の今日。
正直昨日の夜から玄関を張り込みたかったが、母さんが夜遅くまで工房に行っていたのでやむなく諦めた。
まあでも今日私を祝うための余裕を生み出すために注文を仕上げに行ってたようなので、そこは素直に感謝しよう。明日は休日だし。
で、何でそう思ったかという根拠だが。
綻びは数日前、ホッチキスやバインダーを借りたくて母さんの部屋で探し物をしていたら、ある物を見つけたことに遡る。
純白の、いかにもそれらしい小箱で。
燻りかけた躊躇いを打ち消して開いたその中にあったのは、まあ想像の通り。
恐らく母さんのその指にぴったりなのであろう、小粒のダイヤモンドを抱えたシルバーリング。
極めつけにリング部分に絡めるように差し入れられた赤い花弁。
毎年見ているその華を、見間違える訳がない。
……それと、根拠というか妄想というか。
やたらまちまちな日付が気になって、息抜きに何度も書きつけを眺めていたら浮上した仮説。
『8、1、16、16、26、2、9、18、20、8、4、1、26』
最小値は当然のことながら1なんだけど、目をつけたのは最大値だ。
26でワンセットなんてものが、この世にそうそう溢れているとも思えないから、有りがちながらアルファベットを当てはめてみると。
現れたのは短い英文。
『HAPPY BIRTHDAY』
…………巫山戯ている。馬鹿げている。
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作者名:camellia | 作成日時:2021年3月10日 9時