腹の中…マーリン ページ1
気づいたら夢の中、なんてことが最近よくある。それは決まって仕事の最中、デスクに突っ伏して眠っているとき。見る夢も決まって、ある共通点がある。
「マスター、今日もお疲れだね。そういう時は寝てしまうといい。無理に起きていては体を壊してしまうよ。」
今日も後ろから聞こえた胡散臭い優しい声に負けて目を瞑る。
「マスター。」
気づくと一面の花の中で眠っていて、その横でマーリンは座っている。また夢を見ているらしい。
「明日の予定はなんだったかなマーリン。」
「また仕事の話かい?たまには休んだらどうだい?」
「休めるもんか。」
出来る事ならこの夢から覚めたくはないが私にはカルデア職員として、マスターとしての義務がある。
「ほらマスター、今だけでも仕事のことは忘れてしまいなさい。」
いきなり目の前が遮られる。今マーリンはどんな顔をしているんだろうか。
「マーリンは甘い香りがするね。」
「おや、嫌いかい?」
「いや、優しくて落ち着く。」
「それはよかった。」
きっと彼の事だ。こうやって何度も私の夢に入り込んでくるのだから、彼にもなにか腹の中にしまいこんでいることがあるのだろう。
「マスター、酷いクマだねえ。」
「…徹夜続きだったからな。」
「こんなきれいな子にクマが出来てるなんて…。」
「口説くなら他の女にしてくれ。」
視界が晴れたかと思えばマーリンの顔が近くに。
「僕はマスターがいいんだよ。」
「夢魔の甘言は聞かない。さあ、マーリン。この夢から覚ましてくれ。」
マーリンは困り眉で肩を落としてつれないなあ、と一言。だんだんと覚醒していく頭に瞼を持ち上げると、マーリンがベッドに腰かけてこちらを見ている。
「ここまで落とすの大変な子ってなかなか居ないと思うよ、マスター。」
「そりゃ光栄。」
ちらりと見えたマーリンの本音。でも今はまだ答えられない。
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