鬼になった人間の話…伊黒 ページ6
羨ましかった。伊黒さんの視線を独り占めする貴女がただ羨ましかった。
「鬼滅隊に入っておきながら、鬼になり甘露寺を襲った。裏切り者。」
そんな辛辣な言葉も、嬉しいだけだ。憎しみさえ、貴女から向けられるというだけで満たされる。ぞくぞくと背筋に興奮が走った。
「なんとか言ったらどうだ。」
「…恋は盲目なんだなあ、と。」
「ふざけているのか。」
ああ、伊黒さんが切りかかってくる。怒りがともった目はとても魅力的だ。ぐにゃり曲がる太刀筋を受けてみたい。きっと燃えるように痛いだろう。わざと中途半端によけて腕に掠らせてみれば予想通り焼けるように熱く、痛い。
「はああ…痛い、痛い…けど、嬉しい…。」
「…変人。」
きっと、甘露寺さんでさえ、伊黒さんの太刀筋は受けたことは無いだろう。それだけで愉悦。
「伊黒さん、もっと、もっと切ってください!そして私にも伊黒さんを切らせて!」
「断る。」
「ああ、冷たいです。でも、そんなところも素敵ですね…。」
「不愉快だ。」
伊黒さんは彼女の事が好きだから、こんな冷たく接してはもらえないでしょう。ぞくぞくと興奮が脳へ駆けあがるのが分かる。
「鬼になっても痣が出るのか。厄介だな。」
距離を取られた分だけ近づく。二つの色が私を射抜く。
「っえ…。」
「…終わりだ。二度とその顔を見せるな。」
何度か刀がぶつかり合う不快な音がしたところで視界が反転して、首元が熱くなる。切られたことに気づくまでそこまで時間はかからなかった。ボロボロと体が崩れていくのが見えてなぜか嬉しくなった。もうそろそろ、数刻すれば死ぬのに。
「伊黒、さ…。」
「黙れ。」
ああ、でもやっぱり、甘露寺さんみたいに優しい視線を向けてほしかった。
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羅威那(プロフ) - 狐好きさん» ありがとうございます。これからもがんばります。 (2019年8月26日 13時) (レス) id: eebf109561 (このIDを非表示/違反報告)
狐好き - とっっっっってもこの作品好きです!!!更新頑張ってください!!! (2019年8月26日 2時) (レス) id: 6592f6fd87 (このIDを非表示/違反報告)
羅威那(プロフ) - ミーさん» ありがとうございます。これからも邁進していきますのでよろしくお願い致します。 (2019年8月1日 19時) (レス) id: eebf109561 (このIDを非表示/違反報告)
ミー(プロフ) - あなた様の鬼滅が見られるだなんて…!wrwrdのから大好きです!!更新頑張ってください! (2019年8月1日 10時) (携帯から) (レス) id: 750b1e0df3 (このIDを非表示/違反報告)
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