作者の欲と妄想が詰まった短編集 (ページ2)

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卯月の嘘 :相澤 2 ページ2

相澤side

『嫌いだよ』

脳裏に焼き付いて離れない。
味わったことのない感情は
目尻を焼いていく。

相「……じゃあ思わせ振りな態度は取るな」

涙が溢れないうちにその場を後にする。
合理性を欠くことだったのかもしれない。
相手の心の内を聞かなければ
胸が焼かれるような痛みを知ることもなかった。

事の発端であるマイクにこの事を話せば

マ「……嘘だろ…？！」

と俺の肩を掴み揺らしてくる。
だが、俺がなにも言わないのを見て
揺らすのを止めた。

その日は帰って早めに寝てしまった。
起きているのも辛かったのだ。
起きていると『嫌い』の二文字が
離れなかったのだ。

次の日、いつも通り教室へ入る。
いつも通り一人……かと思えばそうではなかった。

『……おはよう。相澤』

相「おう…。」

いつもならおはようと言えるはずなのに。
今日は言えなかった。それほどに昨日が堪えたのだ。

あ「相澤………」

相「……なんだ…」

あ「私の個性知ってるでしょ？」

少し考えて思い出す。そうだ、こいつは……

相「【天ノ邪鬼】……」

あ「そう。本当の事なんて言えやしない
弱虫な天の邪鬼。ここまで言えば
察してくれないかな……」

頬を少し赤らめて言う彼女は昨日より
いきいきとしていた。

相「好きな奴に嫌いとか言われて落ち込まねぇ
奴は居ないと思うんだが……そこはどうなんだ？」

少し意地悪を言ってしまったかもしれないが
彼女は嬉しそうに

あ「ごめん。本当は…………

大好き。」

そうはっきりと言った。

相「……知ってた。」

あ「さっき知ったんでしょ」

不思議とあの胸が焼けるような感触は
無くなっていた。

end………