15周年記念番外編 徒花の戯れ言 10 ページ10
年越を目前に控えたとある夜。
僕は一人、人気のない山の中で深い深い穴を掘る。
ぽっかりと口を開けた闇を見つめていると仄暗い安堵を覚えた。
パラパラ、パラパラと。
これまで溢れ続けた黄色の想いを落としていく。
燃やしてしまおうかとも思ったが芥子科の幻覚を見る趣味なんて僕にはない。
いや、これも幻覚みたいなものかもしれない。
これは抱いてはいけない感情。
これは見つけてはいけない感情。
その感情から目を背けたくて、物理的に目の前から抹消してしまうことにした。
どうせまだ止め方の目途も立っていないのだが、今はそんなことに現を抜かしてるときじゃない。
ならば、戦いが終わった時には?
ふいに浮かんだ戯言を搔き消すべく頭を横に振る。
そんな望みを抱いたところで無駄なんだ。
感情に蓋をしろ。
いつものことだろう。
なのに、何故。
僕の口からは今も花が溢れて止まらないんだ。
これじゃあ、いつまでたっても埋められないじゃないか。
―――叶うはずがないと諦めながら、それでいてまだ心の奥底であの人がいつか自分を見つけてくれないものかと願ってしまう。
あの日の芸子の言葉が頭をチラつく。
ポロポロ、ポロポロと。
零れ続ける黄色の花が恨めしい。
そんなに主張されても困るんだよ。
枯れてしまった望みならば、もう諦めてくれないか。
そんな僕の思いとは裏腹に、今日はいつまでも止んでくれない。
小さな花のくせに、無視することは認めないとばかりに、溢れて、止まらなくて。
貴女「こんなにも、儘ならないものなのか。」
なんて厄介なものなんだ。
年が明ければ戦が始まる。
僕の存在意義を守る為には、こんなことに振り回されてる場合じゃないのに。
物理的な痛みに耐える自信はあった。
だけど、病のものとはまた違う、この何かわからない胸の苦しさは、
一体どうしたら消えてくれるんだろう。
貴女「私を見つけて、か。」
この埋めた花たちは、いったい誰に見つけてほしいんだろうか。
彼に見つけてほしいのか。
それとも、本当は――――――。
あゝ、認めたくない、気づきたくなんかない。
僕は決して、そんな想い見つけてなんかいない。
そう呟きながら穴を埋めてしまう。
誰にも掘り起こされないように。
誰にも見つかることの無いように。
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朧 龍 - ほたてさん» コメントありがとうございます!そして受験、お疲れさまでした!ほんと皆様のコメントがもう有難くてありがたくて…。今後も細々頑張ります♪ (3月2日 1時) (レス) id: 43c48621e7 (このIDを非表示/違反報告)
ほたて - 受験が終わり、久々に読みに来ました!やはり朧龍さんの作品は最高です!! (2月18日 12時) (レス) @page15 id: cd4402c2ff (このIDを非表示/違反報告)
朧 龍 - 時雨さん» ありがとうございます〜!見つけていただけて光栄です!3日は凄いですね‼チマチマ更新したりするので暇があれば是非ぜひ〜 (1月22日 23時) (レス) id: 43c48621e7 (このIDを非表示/違反報告)
時雨 - 3日前にこのお話を見つけ、気がつけばハマりここまで読み進めてしまった‥めちゃくちゃ面白かったです! (12月3日 0時) (レス) @page3 id: 3e5827ba66 (このIDを非表示/違反報告)
朧 龍 - 土方優菜さん» コメントありがとうございます!すべて読んでいただけているとは、本当にありがたい限りです。まだ番外編チマチマ書いてますが本編の方も亀の歩みで進めていきたいなと思っております。これからも楽しんでいただけますと幸いです♪ (11月19日 20時) (レス) id: 43c48621e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朧 龍 | 作成日時:2023年9月18日 22時