【薄桜鬼】名無しの少女の本業は暗殺者です！弐＝２４＝

15周年記念番外編　徒花の戯れ言　6 ページ6

ん？


ということは花を吐いてるところは見られてない？


君菊「血止草なんて、我々には必要ないと思いますが。」


貴女「確かに、そりゃそうだ。てか菊のお姉さん、野草わかるんだ。」


君菊「それはまあ、少しばかりは。いくらすぐに治るとはいえ、
　 姫様に危険があってはいけませんもの。」

流石専属護衛、というところだろうか。


人里離れた鬼の里ならば野草なんてありふれてるだろうし、
そこで生活するなら当然の知恵なのかもしれない。


君菊「それで？わざわざ島原まで来て、
　 かぶれの恐れがある花に埋もれている理由をお伺いしても？」


貴女「えー、あー、うーん。
　 趣味、って言ったら信じてくれる？」


菊のお姉さんの顔が困ったように歪む。


理解できない、というところか、はぐらかされたと思ったか。


君菊「……あまり褒められた趣味ではないと思いますが。」


貴女「違いないや、っ、こほっ、……あ。」


思わず油断して笑ったのが良くなかったかもしてない。


僕の口からまたぽろぽろと、黄色の花が零れていく。


貴女「……見なかったことにならない？」


君菊「花を……」


零れ落ちたそれを凝視しながら、何事か考え込んでしまう。


貴女「おーい、おねーさーん。」


僕の声に思考の海から戻ってきた彼女は、あろうことかニコリと微笑んだ。


貴女「え、何故に微笑むのよ。」


君菊「いえ、こればかりは御自身でお調べいただいた方がよろしいかと。」


貴女「！なに、何か知ってるの？もしかして、やっぱり鬼の……」


僕の言葉を遮りながら、彼女は笑みを浮かべている。


何だろう、悪戯を仕掛けてワクワクしてる子供みたいな感じだ。


君菊「いいえ、島原での噂話ですよ。」


貴女「島原の？」


君菊「では。」


貴女「あ、ちょ、」


チッ、逃げ足の速い、さすが忍者。


島原の噂、ねぇ。


今から芸子さん捕まえて聞いてみる？


でも、今、それどころじゃないしなぁ。


貴女「明日は局長さんの代わりに撃たれなゃならないし。」


この時代の銃の精度なんて、組織にいた奴らなんかにくらべりゃゴミなんだけど
だからこそというかなんというか、肩代わりをするってんなら、致命傷にならない程度に、
だけどわざわざちゃんと当たりにいかなきゃならないわけで。


貴女「ああ、厄介だな。」


それが何に対してなのかは、彼女ですら答えを持たなかった。

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