【薄桜鬼】名無しの少女の本業は暗殺者です！弐＝２４＝

15周年記念番外編　徒花の戯れ言　14 ページ14

口元を隠しながら、僕は少しだけ視線を彷徨わせる。


藤堂「俺さ、今回の戦いで本気で死ぬかもしれないと思った。今までだって、
　 死ぬ覚悟を決めて全力で戦ってきたつもりだけど、今回は本気でヤバいって。 自分の剣が相手に届く前にもう死ぬかもしれないって。なにより・・・さ。 お前が気絶するのを目の当たりにして、怖くなったんだ。 お前が、
　 目の前からいなくなるかもしれないって。だから今、ちゃんと伝えておかねえと後悔すると思う。」


心臓が早鐘を打つ。


こんなにまっすぐに見つめられてはどうすればいいのかわからなくて。


そらしてしまいたいのに、縫い付けられたように彼から目が離せない。


貴女「ふーん、そっか。何を？」


声が上擦らないように、動揺を気取られないように。


湧き出す花をごくりと飲み込んで、零れないようにするのに必死だった。


藤堂「俺、お前のことが好きだ。」


ドクン、と大きく心臓が跳ねるのと同時に、今までより大きな何かが口から飛び出していく。


布団で口元を隠していなければ間違いなく彼に見られていただろう。


バレないうちにそれを右手で握りつぶす。


一方で彼の方も冷静ではないようで、ドストレートに好意が僕に向けられる。


なにがなんだかわからなくなって、僕も彼もいっぱいいっぱいだ。


藤堂「俺はおまえの・・・Aのことが好きだ。俺と、付き合ってくれないか。」


ああ、こんなにも心が震えているのに、こんなにも嬉しいと思っているのに。


暗い影がそれを是としない。


もう、頭が容量オーバーで思考が追い付かない。


貴女「ごめん……、こーゆーの馴れてなくて･･･。時間が欲しい。」


ぐしゃりと手の中のそれを握りつぶしながら、何とか言葉を捻り出す。


藤堂「わかった。ちゃんと返事、聞かせてくれよな。」



独りになった部屋の中で、ふと固く握った手を緩める。


そこにあったのはこれまでの黄色の花とはまた違う、銀の百合。


僕はその花びらを喰む。


貴女「……甘い香りのくせに、苦いや。」



隈処(くまと)にて 秘(ひ)むと定(さだ)めし しのぶ草(くさ)

―――物陰でひっそりと咲くしのぶ草の様にこの想いは秘めると決めたはずなのに


打(う)ち出(い)でなれば 認(みと)むべからむ

―――出てきてしまったならば、認めるしかないじゃないか

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