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15周年記念番外編 徒花の戯れ言 13 ページ13

波の音に目を覚ます。


淡い微睡から浮上した意識が次に認識したのは見慣れない天井。


ここはどこだ?


ちらりと周りに目をやるが、人影もあの煩わしい黄色の花も見当たらない。


固まった鈍重な体をのろりと動かしてもう少し様子を探ってみる。


船の上、か?


確か新選組は鳥羽・伏見の敗戦の後に江戸へ船での移動があったはず。


そう考えれば筋は通るが、それで僕はいったいどれくらい眠っていたのだろう。


もしかして、花を吐くとか何とかも疲れていた僕が見ていた夢でそんなこと現実には、


ポトリ


……現実は甘くないよなぁ。


確か、感情によって吐き出されるとかだったから、気絶に近い眠りならば花も零れないのかもしれない。


だからといって気絶ばかりもごめんだが。


ガチャッ


戸の開く音に目をやると、彼の姿がそこにあった。


貴女「子犬君……。」


僕はそう発したはずだったのだが、口から零れるのは掠れた空気の音だけ。


よかった、迂闊に花なんて零れたらそれはそれで面倒なことになる。


声が出なかったことへの焦りより花が溢れなかったことへの安堵が勝る。


藤堂「Aっ!目、覚めたんだな。良かった・・・。あ、水飲むか?」


注いでくれた水がカラカラに乾いた喉に沁み込んでいく。


貴女「あい、がと。」


花が溢れないように気をつけながら、いやそもそもうまく声が出ていないが
何とか言葉を紡ぐ。


ああ、ダメだ。


気を抜くと花が零れてしまう。


藤堂「なあ、話が、あるんだ。」


いつもより少し低い、真剣な表情を帯びた声音に身体が跳ねた気がする。


藤堂「お前が起きたら話そうって決めてた。」


ドクンッ、ドクンッ


脈が速くなっていくのがわかる。


このまま爆ぜてしまうんじゃないだろうか。


そんなバカげた考えが頭を過ぎる。


冷静に、落ち着いて。


貴女「・・・なに、話って。」

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朧 龍 - ほたてさん» コメントありがとうございます!そして受験、お疲れさまでした!ほんと皆様のコメントがもう有難くてありがたくて…。今後も細々頑張ります♪ (3月2日 1時) (レス) id: 43c48621e7 (このIDを非表示/違反報告)
ほたて - 受験が終わり、久々に読みに来ました!やはり朧龍さんの作品は最高です!! (2月18日 12時) (レス) @page15 id: cd4402c2ff (このIDを非表示/違反報告)
朧 龍 - 時雨さん» ありがとうございます〜!見つけていただけて光栄です!3日は凄いですね‼チマチマ更新したりするので暇があれば是非ぜひ〜 (1月22日 23時) (レス) id: 43c48621e7 (このIDを非表示/違反報告)
時雨 - 3日前にこのお話を見つけ、気がつけばハマりここまで読み進めてしまった‥めちゃくちゃ面白かったです! (12月3日 0時) (レス) @page3 id: 3e5827ba66 (このIDを非表示/違反報告)
朧 龍 - 土方優菜さん» コメントありがとうございます!すべて読んでいただけているとは、本当にありがたい限りです。まだ番外編チマチマ書いてますが本編の方も亀の歩みで進めていきたいなと思っております。これからも楽しんでいただけますと幸いです♪ (11月19日 20時) (レス) id: 43c48621e7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:朧 龍 | 作成日時:2023年9月18日 22時

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