15周年記念番外編 徒花の戯れ言 12 ページ12
頭の奥ではわかってるんだ。
今こんな無茶をしたところで何にもならない。
本当なら周りの余計な敵でも倒してきた方がいいだろうし、
そうじゃないなら体力を温存した方がいい。
だけど今の自分では敵と対峙すれば返り討ちに会うだろうし、
だからといって大人しくしていて幻覚に押し潰されるのは目に見えていて。
それを有耶無耶にする為にわざわざこんなところで武器を振り回している。
非合理極まりないが、自分の生死以外でこんなにも感情がかき乱されてどうすればいいのかがわからない。
貴女「頼む。」
ああ、何で今なんだ。
なんで今、自覚してしまうんだ。
しゃがみこんで頭を抱えた。
気が付いていない。
見つけてない。
あんなにも言い聞かせていたのに。
顔を手で覆い、息を漏らす。
貴女「頼むよ。」
どうか、どうか。
君だけは無事でいてほしい、だなんて。
ポロポロと、ポロポロと。
溢れて、止まらないのは、花か、感情か。
浅ましさすら覚えるこんな感情が 恋 だというのか。
彼女たちがあんなにもキラキラと語っていたものと、この感情が一緒だとは到底思えないのに。
それでも、僕は。
貴女「君が生きていてくれるなら。」
溢れる黄色の花を嚙み潰す。
苦みが口の中に広がっていく。
貴女「僕の命ぐらい、くれてやるから。」
東の空がぼんやり白んでくる。
そろそろ戻らないとお嬢さんに怒られる。
日が昇ってもまだ合流できないというのなら、その時には斥候に出るのもいいだろう。
薄明の中、ふらりと立ち上がり、くらりと血が巡る。
少し、無理が過ぎたらしい。
急いては事を仕損じる、ちょっと仮眠をとってまた動けばいい。
人気のない方を選んで歩き出す。
ここでもう少し冷静に判断をしていれば、気絶なんて無様を晒さずに済んだのだが、
それは後の祭りである。
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朧 龍 - ほたてさん» コメントありがとうございます!そして受験、お疲れさまでした!ほんと皆様のコメントがもう有難くてありがたくて…。今後も細々頑張ります♪ (3月2日 1時) (レス) id: 43c48621e7 (このIDを非表示/違反報告)
ほたて - 受験が終わり、久々に読みに来ました!やはり朧龍さんの作品は最高です!! (2月18日 12時) (レス) @page15 id: cd4402c2ff (このIDを非表示/違反報告)
朧 龍 - 時雨さん» ありがとうございます〜!見つけていただけて光栄です!3日は凄いですね‼チマチマ更新したりするので暇があれば是非ぜひ〜 (1月22日 23時) (レス) id: 43c48621e7 (このIDを非表示/違反報告)
時雨 - 3日前にこのお話を見つけ、気がつけばハマりここまで読み進めてしまった‥めちゃくちゃ面白かったです! (12月3日 0時) (レス) @page3 id: 3e5827ba66 (このIDを非表示/違反報告)
朧 龍 - 土方優菜さん» コメントありがとうございます!すべて読んでいただけているとは、本当にありがたい限りです。まだ番外編チマチマ書いてますが本編の方も亀の歩みで進めていきたいなと思っております。これからも楽しんでいただけますと幸いです♪ (11月19日 20時) (レス) id: 43c48621e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朧 龍 | 作成日時:2023年9月18日 22時