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冷たい感触にびっくりして目を覚ました。
どこ……ここ……
目を擦ろうとして、両手の自由が効かないことに気づいた。
手首に擦れるような痛みが走る。
縛られてる……?
ぞわっと鳥肌が立ち、恐怖に襲われた。
何、何で。怖い。
じわりと下瞼に涙が浮かぶ。
泣き叫びそうになったその時、カツカツと足音が聞こえた。
私がいる部屋には誰も居なくて、物さえない。
殺風景な鉄筋コンクリート。
思わずその床に頬をつけ直して目を瞑った。
ガチャ、と音がして部屋に唯一ついたドアが開く。
体を強ばらせ、じっと寝たフリをする。
「まだ起きてねぇわ。つーかコレほんとにダイナマイトの娘なんか」
ガチャンと音がしてドアが閉まる。
向こう側からは何人かの話し声が聞こえた。
ゆっくり顔を上げてもう一度部屋をゆっくり見渡す。
ドアがひとつ。窓がひとつ。それ以外には隅に積み上げられたダンボール箱だけだった。
今見に来たからしばらくは大丈夫。
そう大きく深呼吸をしてみても、吐く息は震えてしまった。
私がまだ冷静でいられるのは、今日見る予定だった刑事ドラマのお陰だろうか。
先週の放送の時、もし自分が誘拐されたらどうするだろう。なんて物騒な想像をしたからかもしれない。
縄は手足をそれぞれ縛っている。
手は後ろ手で見えないけれど、足を見れば靴下の上から荒縄が巻かれていて、そりゃ手首も痛くなるわと納得した。
体を起こして何とか体育座りのように座ってみる。
今すぐ大声を出して泣き喚きたい。
ボロボロと零れる涙を膝に目を押し付けて拭う。
声を殺して必死に息を吸う。
落ち着けと何回も自分に言い聞かせ、顔を上げた。
眠ってしまう前の記憶を辿る。
道案内をしてくれと頼まれて入った車の中には、男の人が三人居て、彼らは快く私を迎え入れてくれた。
車に乗ったらお礼だと言ってフルーツジュースをもらって、私はそれを飲みながら駅までの道を案内した。
途中で私のことを沢山聞かれた。
歳は、小学校は、親の職業は、などなど。
何か変だなと思った時には、だんだん眠くなってしまって、
それで、今ここ。
うん、誘拐だ。
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ほしいか(プロフ) - @!さん» 長い間読んでいただけてるんですね、ありがとうございます!(T▽T)ゆっくり更新にはなりますがこれからもよろしくお願い致しますm(__)m (2021年5月4日 22時) (レス) id: a6bcddeca8 (このIDを非表示/違反報告)
@! - 最高です!!!結構初期から観させてもらっているのですが反抗期、勝己パパと娘の関係がどうなっていくのか楽しみです!体調などには気をつけて更新頑張ってください!応援してます!!! (2021年4月17日 17時) (レス) id: b6d2dcf77b (このIDを非表示/違反報告)
ほしいか(プロフ) - 啞連「♀」さん» ありがとうございます〜っ!はい!頑張りますのでこれからもよろしくお願いします!(o^^o) (2021年2月5日 15時) (レス) id: a6bcddeca8 (このIDを非表示/違反報告)
啞連「♀」 - 勝己パパ最高です!更新頑張ってください! (2021年2月3日 17時) (レス) id: 4baf8bf284 (このIDを非表示/違反報告)
ほしいか(プロフ) - 碧鞠さん» コメントありがとうございます(o^^o)こちらこそ素敵なコメント頂けて感無量です(T▽T)少しずつの更新になってしまいますが、これからもよろしくお願いします! (2021年1月1日 18時) (レス) id: 7722cd4db4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほしいか | 作成日時:2020年10月20日 19時