「君は悪くない」

6.道 ページ7

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(ヨンジュ、昨日は楽しかったね)

 翌日の23日。日本に帰る前に、私はヨンジュの納骨堂に来ていた。昨日もシアン兄さんとヨンジュ兄さんと一緒に手を合わせに行ったのだけど、帰りの便までまだ時間があったし、ミンジュン兄さんに「2人きりで話したいこともあるだろ。俺達はいつでも行けるし気にすんな」と言われたのでそれに甘えることにした。


(ミンジュン兄さん、「ヨンジュの好きなさくらんぼとチョコのケーキだぞー！」って調子乗ってすっごく大きいケーキ買ってくるからびっくりしちゃった。他にもご馳走様がいっぱいあるのに。私達じゃとても食べ切れないから、事務所の皆さんにお裾分けしたよ)

 ヨンジュが生きてたときも、誰かの誕生日にはとんでもない量のご馳走様をミンジュン兄さん中心に用意していたのを思い出してくすりと笑う。あの時はヨンジュが一番の大食いだから何とかなったんだっけ。ヨンジュも流石に苦しんでたけれど。



(シアン兄さんもミンジュン兄さんも変わらず元気そうで良かった。私のせいで二人には苦労を掛けたし、多分二人とも年下の私達には弱い所を見せないようにしてただろうから……。とにかく、今も好きな事を続けられてるのは本当に良かった)

 シアン兄さんもミンジュン兄さんも強いな、と思う。決してヨンジュの事を忘れたわけでも、死を軽く見ていたわけでもない。ヨンジュの遺体を見たとき、ヨンジュの葬式に参列したとき、そしてヨンジュの一周忌。あの時の二人の涙を、私はいつまでも色濃く鮮明に思い出せる。

 でも今は。楽しかった思い出も失った悲しみも、進めなかった道も。全部を大切にしながら、新しい道を歩いている。私には、とても進めない道を。


(……ヨンジュも、ごめん)

 わたしが、あなたの進みたかった道を——。

 そこまで考えて、首を振る。



(ごめん。誕生日だったのにこんな。……そうだ。次会うときは三回忌の時だよね。兄さん達が言ってたんだけど、三回忌が終わったらヨンジュの納骨堂の場所を公開するつもりなんだって。きっと、たくさんのファンの方が来てくれるよ。良かったね、ヨンジュ)

 ヨンジュは私達の中で一番ファンとの交流が好きだったから。私はヨンジュがファンひとりひとりに目を向けて愛を与える姿を尊敬していたし、大好きだった。



「……じゃあ、そろそろ行くね。またね、ヨンジュ」

 ヨンジュの笑顔の写真に同じように笑顔を返してから、私は納骨堂を後にした。





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