「君は悪くない」

42.天才マンネ ページ43

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「高校一年の冬休みにH9エンターテインメントの社長にスカウトされたから……」

 そう言えば、練習生期間は初出し情報だった。プロフィールにちゃんと書いたし、今更隠すことでも無いけれど。


「えっ、ヤバ。スカウトってことは、元々アイドルになりたかったてわけじゃない？」

「うん。それまでKPOP知らなかった。なんならアイドル自体も。歌ってみて〜って言われて、通ってた高校の校歌歌ったくらいには」


 くすりと笑いながら言うと、ケイタが「校歌！？」と吹き出す。


 社長にスカウトされた時、私は国際ボランティアの為に韓国を訪れていて。プログラムが終わって帰国する前に少し観光でもしようとぶらついていたところで社長に捕まったのだ。
 社長やシアン兄さん、ミンジュン兄さん、ヨンジュはメインボーカルを張れるメンバーを探していたらしく(シアン兄さんの歌声はメインボーカルよりもリードボーカルにしたかったらしい) 、「日本の歌でもなんでもいいから歌ってみて」と事務所に半強制的に連行した私に突然言ってきて。それで頭に浮かんだのが校歌くらいだったのだ。今思えば流行り歌とかいくらでも歌えたなとは思うけれど、あの時は本当にそれしか出てこなかった。

 あの後、スカウトを断る私に「俺達のパフォーマンス見てから決めてよ」とヨンジュが言って。シアン兄さん、ミンジュン兄さん、ヨンジュが披露したBTS先輩の『MIC drop』が、私にとって初めて聴いたKPOPだった。あのパフォーマンスを見て、私はKPOPアイドルになりたいと思ったんだったな。そんなことを思い出す。



「それでデビューした時からあれだったんだ。うわーーーー、本当に天才マンネだってメンバーからも言われてただけあるよ」

「まあ、その10ヶ月は詰め込みすぎてただの10ヶ月よりずっと濃かったから……」


 思わず遠い目をしてしまう。『N͜͡umber』というグループ名と芸名が決まってからミンジュン兄さんが「絶対に今年の11月11日にデビューするぞ」なんて言ってヨンジュが賛成するから、生き急いだみたいな日々を送ることになってしまった。



「ナナって経歴めちゃくちゃ謎だったから知れて嬉しい。というか、もっとアピールしても良かったんじゃない？ 天才マンネエピソードじゃん」

「いやいや、そもそも天才マンネって呼ばれてるの自体ちょっと……だったから……」


 苦笑いすると、ケイタは「ナナってほんと謙虚だ。それが魅力なんだけど」と笑った。





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