40.異世界(ソン・ハンビン) ページ41
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「……ハンビンさん、ありがとうございます。ヨンジュのこと、好きでいてくれて。支えにしてくれて」
ナナさんが微笑みながら言った。美人だな、と改めて思う。ナナさんの笑顔は儚くて、自分よりずっとずっと大人に見えて。なんだか異世界のもののような感じがする。
だからこそ近寄り難いイメージがあったのだけど、たまに見せる年相応の表情……例えばさっき俺のロールモデルがヨンジュさんだと知ったときの静かな瞳がぱっと煌めいた瞬間が、等身大で凄くかわいいと思った。男の人にこんな風に言うのは変だけれど、見惚れてしまった。
「いや、俺が勝手に憧れてただけで」
「それが嬉しいんです」
本当に嬉しそうなナナさん。何だが気恥ずかしい。
「それはそうと……眼鏡、本当にすみませんでした。弁償します」
「えっ。弁償なんてそんな。俺も悪かったですし。それにあの眼鏡、ミンジュン兄さんにマジで似合わないからさっさと捨てろって前から言われてたやつなので」
「捨てろ……」
なかなか過激なワードに苦笑いをしてしまう。
「それで、使ってた眼鏡壊しました〜って言ったら新しいの買ってもらったんです。この番組に出るって門出に」
そう言って「こっちの方が似合いますよね」と部屋の奥から持ってきた眼鏡を掛けるナナさん。確かに、俺が踏んでしまった四角い黒縁メガネより、今掛けている細いダークグレーの丸っぽい形の眼鏡の方がずっと似合っていた。
頷くと、ナナさんはにこりと笑う。
「だから気しないでください」
「だとしても……」
そう言うとナナさんは考えるような素振りをして、「ハンビンさんって何年生まれですか?」と聞いてきた。
「? 01ですけど……」
「あ、同じですね。じゃあ、お互い今から呼び捨てタメ語でいきましょう。それと……明日の全体練習が終わって時間があったら、自分と一緒に練習してくれませんか? それで眼鏡の件はチャラで」
ぱちり。目を瞬かせる。
「それ、俺がめちゃくちゃ得してるよ。……ナナ」
「そんなことないよ、ハンビン」
花が咲くようにナナが笑う。あまりに綺麗で、敵わないなあと思う。
「というか、ハンビン……なんで眼鏡持ってたの?」
「いや、いつ会っても返せるよう常に持ち歩いてて……」
「常に? ハンビンってちょっと変な人?」
少し沈黙のあと、二人同時に吹き出してしまう。異世界にいるような彼との距離が、縮まったような気がした。
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アップルパイ(プロフ) - なのこ5546さん» たくさんある作品の中でそう言って貰って凄く嬉しいです! 更新頑張ります、本当にありがとうございます^^ (2023年2月27日 18時) (レス) id: a55c9bddea (このIDを非表示/違反報告)
なのこ5546(プロフ) - 面白くて一気に読んじゃいました!!ボイプラ関連で1番大好きです🫶更新楽しみにしています頑張ってください! (2023年2月25日 23時) (レス) id: 2327b9d39c (このIDを非表示/違反報告)
アップルパイ(プロフ) - すみぃさん» ありがとうございます。拙い文章ですがそう言って頂けると励みになります。更新頑張ります! (2023年2月14日 6時) (レス) id: a55c9bddea (このIDを非表示/違反報告)
アップルパイ(プロフ) - スリーズペンさん» コメントありがとうございます。とても嬉しいです! ぜひ番組と一緒に楽しんで頂けたら幸いです。 (2023年2月14日 6時) (レス) id: a55c9bddea (このIDを非表示/違反報告)
すみぃ(プロフ) - 楽しみながら読ませていただいてます。読んでいてとても面白いです!頑張ってください!! (2023年2月11日 23時) (レス) id: 0330ee01bd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アップルパイ | 作成日時:2023年2月6日 21時