「君は悪くない」

3.本当の姿 ページ4

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「……わ、これまだ残ってるんだ」

　スマホの画面を見つめながら眉を顰めた。画面には、私がかつて加入していたアイドルグループの記事。

　シアン兄さんが出演しているドラマの監督の名前や過去作が知りたくて、シアン兄さんの出演歴を調べたら早いかなと調べてみたら、シアン兄さんのプロフィールに元「N͜͡umber」のリーダーとあって。もしかしたら……となんとなく検索したら、がっつりヒットしてしまったのだ。


　「N͜͡umber」。今は2022年の6月中旬だから、一年半ほど前に解散したグループだ。自分で言うのも変だけど、記事にある通りトントン拍子で上手く行っていたグループだった。あの事件が起きるまでは。
　そこまで考えて、深いため息をつく。やめよう、思い出しても気分が沈むだけだ。既に傾きかけてるんだから。


(それにしても、シアン兄さんやミンジュン兄さんは仕方ないとして、なんで私も残ってるかなあ……)

　シアン兄さんやミンジュン兄さんは今でも事務所で芸能活動してるから仕方ないけど、今や一般人の私の記事なんて残してもどうしようもないだろう。これって削除申請できるのかな……と思いながら画面をスクロールしていくと、一番下のコメント欄に辿り着いてしまう。


(「ぜんぶ私達の幻想だったんじゃないかって思っちゃうくらい、完璧で、綺麗で、ミステリアスな子だった。デビューした時から推してたけど、今思えば私はナナのことを知っているようで何も知らなかったのかもしれない。」……か)

　今何しているんだろう。もう韓国にはいないのかな。幸せでいてほしい。もう一度歌って踊る姿を見たい。天才日本人マンネは後にも先にもこの子だけ。何年経っても忘れない。永遠の推し。本当に大好きだった——そんな、嬉しいような、むず痒いようなコメントの中を見ていく中、それが目に入ってどきりとした。


(そりゃ、そうだよね……ナナは……『俺』は、作られた存在なんだから)

　こうやって今も美しい思い出として愛してくれるファンも、もし今の自分の姿、本当の『私』を知ったとしたら。変わらず愛してくれるのだろうか。それとも、嘘つき、裏切り者だって幻滅するだろうか。


　嘘をつこうとしたわけじゃない。騙したかったわけじゃない。輝くために、要らない部分を隠しただけ。でも結局、私は色んな人に秘密を作りすぎた。



(だからこそ、私は表舞台には戻らない方がいいんだ)

　はあ、と息をついて。私は記事を閉じた。





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