「君は悪くない」

20.思いがけない人（ソン・ハンビン） ページ21

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　次にスクリーンに映ったのはフェテクさんと同じ3スター。


「いよいよだー！ めちゃくちゃ緊張する！」

　どうしてジュンヒョンが緊張するんだ。心臓バックバックですよ！ と何故か自分に向かって胸をバンバン叩いてみせる姿をおかしく思いながらも、自分も手汗が出てくる。



「あ！ 来ましたよ！」

　ジュンヒョンが指差す。入り口に人影が映ると、会場が一気に静かになった。全員が入口に注目する。椅子から体を起こしてその姿を見ようとする人もいる。この中で登場するのはとても緊張しそうだ。





「え……？ あれってまさか……」

　緊張しているのか、耳元を触りながら少し目線を下にしながら奥から出てきた細身の人。しかしステージに足を踏み入れると、決心したようにパッと顔を上げた。凛とした顔が正面を見た時、明らかに会場の空気が変わった。
　思わず目を見開く。目の前の光景が信じられない。周りも同じように目を見開いたり、口を開けたりしている。


「ハンビンさん、あれって……ナナですよね？」

「そう、だね……」


　俺達もいつの間にか立ち上がって、目の前の人から目を離せなくなっていた。

　とんでもなくビジュアルが良くて、とんでもなくパフォーマンスがうまくて、とんでもなく多才だった人。解散後消息が全くわからず、きっともう二度と表舞台には現れないだろうと今も惜しまれ続けられている人。——目の前にいるのは紛れもなく、N͜͡umberの元メインボーカルかつ天才日本人マンネのナナさんだった。



"これドッキリ？"

"ナナがどうしてこんなところに？"

"アイドルやめたと思ってた"

"俺めちゃくちゃファンだった"


　ひそひそとみんなが話すのを気にもしないように、ナナさんは淡々とした表情でステージの中心まで歩いて立ち止まる。


(あ。フェテクさんを見た)

　ナナさんが真ん中の一位席に座るフェテクさんを見つめている。表情はあまり変わっていないように感じるけれど、ナナさんも「PENTAGONのフイ」が参加しているということに驚いているのかもしれない。対して、フェテクさんの方はわかりやすく口を開けてめちゃくちゃ驚いている。


(目が、合った……？ いや、流石に考えすぎか)

　フェテクさんを見たあとにナナさんはさっと周囲を見渡したのだけど、一瞬、ほんの一瞬だけ自分をじっと見たような気がした。でもきっと、ライブでアーティストと目が合ったと勘違いしてしまう類のものなんだろう。そう思った。





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