14.私のやりたいこと ページ15
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ヨンジュが死んで、私達三人になった時。私達には二つの選択肢があった。このまま解散するか、ヨンジュの意志を引き継いで三人でまたN͜͡umberとして再スタートを切るか。
きっと、後者の方が良かった。私達がN͜͡umberとしてステージに立ち続ければ、たとえ難しくてもいつかヨンジュが見たかったもの——ソウルオリンピック主競技場スタジアムの景色を見せてあげられたかもしれなかったから。収容人数が7万人ほどの、H.O.T、神話、god、東方神起、EXO、BTS、NCT DREAM、IU……本当に選ばれたアーティストしか立てないその場所。私も、できることなら見せてあげたかった。ヨンジュがあの場所にどれだけ焦がれてたかは、誰よりも知っていたから。
シアン兄さんとミンジュン兄さんだって、私に続けようと言うことはなかった、いや、私に気を遣って言えなかったのだろうけど、ヨンジュの夢を叶えてやりたかったはずだ。
でも、無理だった。私のせいでその夢は叶えることはできなくなって。結局私達は解散する他なかった。
「……ごめんなさい」
ぐっと唇を噛んだ。シアン兄さんは首を振る。
「……それはもういいんだ。そのことでAを責めるつもりは全然ないよ。仕方ないから。……でもね、A。Aの言う通り、ヨンジュはもう居ない。居なくなって、二年経ったんだ。俺もミンジュンもなんとかやってる。それなのにAだけいつまでも前に進まないんじゃ、ヨンジュだってゆっくり休めないよ。ヨンジュは心配性だからさ。
それに、ヨンジュはAがまたステージに立ったら喜ぶと思う。ヨンジュはAのパフォーマンスが世界で一番好きだったから」
「ずるいですよ、そういうこと言うの……」
そんなの、私だって分かっている。
「A、アイドルにはもうなりたくない? ステージの上に立つのは嫌?」
「わから、ない……。分からないです……私が何をしたいのかなんて……」
首を振る。
ヨンジュが居ない世界は暗闇に満ちていて、前も後ろも分からなくて。何をしたいかなんてわからない。
「でも、ステージに立ったら分かるかもしれない」
「そう、でしょうか……」
「辛ければ途中で辞退したっていい。最終的にアイドルになってもならなくても、Aが決めたことならいい。でも、可能性を最初から潰すのは駄目だ。……責任は兄さん達が取るから」
「……はい」
ずず、と情けなく鼻を啜ってから、私はゆっくりと頷いた。
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アップルパイ(プロフ) - なのこ5546さん» たくさんある作品の中でそう言って貰って凄く嬉しいです! 更新頑張ります、本当にありがとうございます^^ (2023年2月27日 18時) (レス) id: a55c9bddea (このIDを非表示/違反報告)
なのこ5546(プロフ) - 面白くて一気に読んじゃいました!!ボイプラ関連で1番大好きです🫶更新楽しみにしています頑張ってください! (2023年2月25日 23時) (レス) id: 2327b9d39c (このIDを非表示/違反報告)
アップルパイ(プロフ) - すみぃさん» ありがとうございます。拙い文章ですがそう言って頂けると励みになります。更新頑張ります! (2023年2月14日 6時) (レス) id: a55c9bddea (このIDを非表示/違反報告)
アップルパイ(プロフ) - スリーズペンさん» コメントありがとうございます。とても嬉しいです! ぜひ番組と一緒に楽しんで頂けたら幸いです。 (2023年2月14日 6時) (レス) id: a55c9bddea (このIDを非表示/違反報告)
すみぃ(プロフ) - 楽しみながら読ませていただいてます。読んでいてとても面白いです!頑張ってください!! (2023年2月11日 23時) (レス) id: 0330ee01bd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アップルパイ | 作成日時:2023年2月6日 21時