「君は悪くない」

11.要項 ページ12

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「冗談ですよね？」

「冗談に見えるか？」


 めちゃくちゃ見えます。そう言いたくなったけど、流石にいくら自由人間のミンジュン兄さんだとしても、こんな突拍子もない冗談を言うわけがない。私は小さく息をつく。


「……いや、ミンジュン兄さん。色々言いたいことはあるんですけど、とりあえずこの番組の募集要項ちゃんと読みました？ 『2009年1月1日以前に生まれた"男性"』ですよ。だ、ん、せ、い。男ですよ、男！ 私の性別、分かりますよね？ もしバレたら失格どころじゃないんですよ。めちゃくちゃ非難されますよ」

「今までバレなかったんだ。大丈夫だろ」

「これからもバレない保証なんてないですよ」


 3ヶ月も練習生と共同生活をするのに、バレない方がおかしい。N͜͡umberで活動してた時は、私も兄さんやヨンジュ達も、私と他の男性アイドルグループの人とが必要以上に触れ合わないように気をつけてきた。でも番組中の宿舎ではそうもいかない。
 それにバレたとして、N͜͡umberの時なら別に男だとは言ってなかったから〜と言い訳が出来たけど(それもかなり厳しい)、今回は流石に無理だ。100人近い男性アイドルの卵の中に、一人男と詐称した女が紛れてたなんて。言い訳しようがないし、男目当てだの最低だのめちゃくちゃに叩かれるに決まっている。


(その気がなくても周りがどう見るかだしなあ……)

 男性アイドルに近づく女性に向けた批判の苛烈さは、アイドルをやってきたからよくよく知っている。アイドル陸上大会……いわゆるアユクデに出た時、私の目の前で躓きそうになった女性スタッフさんを咄嗟に受け止めたら、その方が「わざとでしょ」とか「ナナ目当て？」みたいな感じで数日色々言われてしまったのを思い出す。実際は女が女を助けただけなのに、プチ炎上させてしまったのは本当に申し訳なかった。


「その時はその時」

「て、適当すぎる……」


 自由人かつ楽観的なミンジュン兄さん節が炸裂しまくっている。



「というか、そもそもなんで私が『BOYS PLANET』に出る話に？ 脈絡がなさすぎません？」

「そりゃあAが番組プロデューサーに依頼されたからだろ」

「……は？ え？ 知ってたんですか？」


　忘れてしまいたい約4ヶ月前の出来事を思い出し、思わず目を見開く。


「ん。Aが来る前に社長から聞いた」

「社長から！？」


　どういうことですかそれ！？ 思わず声を上げると、ミンジュン兄さんが面白そうに笑った。





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