拾−生きていてほしかった。この願いは叶うことはないけれど ページ10
＊
嫌な予感。気配。身の毛がよだつ。Aが何かを感じとった。それは煉獄も同じだったようで、Aのいる車両へと移動してきた。
「日向妹！竈門少年と猪頭の少年の所へ行ってくれるか！彼等には鬼の頸を任せている！成し遂げてくれるだろうが君も頼む！」
頷いたAを見て、彼はまた移動して行った。Aはまず汽車の屋根に上がった。先頭に向かって走り出す。気持ちの悪い何かが、無限列車を覆っているのが分かる。早く行かないと、そう思い駆ける。
「A！」
「！メジロか！」
「違うぞ伊之助！Aだ！！！メジロは鳥だ！！」
「だァー！うっせぇ！！今はそれどころじゃねぇんだよ！」
炭治郎がAに駆け寄り、状況を話し始める。彼は誰よりも早く起きて、魘夢の頸を斬った。しかし、あと一歩遅く、魘夢はこの無限列車と融合したらしい。そこで、煉獄から伊之助と共に鬼の頸を捜して斬れ、という指示を受けた。そして見つけたのだ、先頭車両にあることに。けれど、魘夢の術が邪魔をして鬼の頸どころか、そこへ行き着くことすらできない、ということだった。
「A、あの目に気をつけるんだ。強制的に眠らされる。それを解くには」
「だ、い、じょう、ぶ」
自決しなければならない。それはもう、分かっている。炭治郎は、Aの言葉を聞いて頷いた。三人で斬る。伊之助の合図で動く。目を見ないようにする、そんな事は出来ないから、どうすればいいかは分からないまま。
触手を斬る。斬った、けれど目が合った。たくさんの目がついている。気付いた時には既に遅くて、Aはがくりと強制的に眠らされた。
＊
ええん、ええん。泣き声と、血溜まりの家。救うことの出来なかった、家族達が立っていた。
「助けてって、言ったのに！」
「痛かった、痛かったんだよ、Aちゃん！」
「もっと生きていたかった！」
責められる。皆から。弟妹たちから、葵枝から。彼らがもっと生きたかったのも知っている。Aもそう思っていた。生きていてほしかったし、そう願っていた。言ってしまえば、自分が死ねばよかったとも思った。けれど、それが叶わない事も分かっている。
「「お前なんか、拾ってくるんじゃなかった」」
炭十郎と、みつから言われる。Aは依然として無表情のまま、自決した。
拾壱−それは私の家族への侮辱と捉える→←仇−どうか、幸せになって欲しいとねがう
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作者名：僕達はエンジェル | 作成日時：2021年9月25日 14時
