捌−白の呼吸 ページ8
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── 白の呼吸
コオオオ…と独特の呼吸音。髪色が薄らと白へ変わる。慈の呼吸よりも、これはAに馴染むような気がした。脳内の御先祖様と同じように身体を動かす。＿何故だろう。この動きは見たことがあったのだ。Aの身体が、覚えているように、しなやかに、力強く動く。
＿＿白の呼吸 壱ノ型 青天白日
まるで、青空の中に光り輝く太陽を彷彿とさせるその剣技は、物凄い速さで触手を斬っていった。その体捌き、刀捌き。Aと御先祖様の姿が重なった瞬間だった。
「げほっ！！！げほ、ごほっ」
噎せた。まだ、Aの体は白の呼吸についていけてないからだ。けれど、何か、わかったような気がした。己が極めるべきは慈の呼吸ではなく、白の呼吸だと言うことを。けれど、今はそれどころでは無い。斬った触手が復活している。また、技を。そう思った時、何かが大きな音を立てて、Aの方へ向かってくる気配があった。
「日向妹！」
「、けほ、っ」
煉獄だった。煉獄が起きたのだ。ほっと、Aは安堵した。
「よく戦ってくれているな！君はここを頼む！残りは俺と、黄色い髪の少年と竈門妹がそれぞれ守る！頼むぞ！」
「は、い！」
他の皆も起きたようで、安心した。煉獄はまた、ふっと消えて車両を移動したようだった。煉獄の己を信頼するその眼を思い出しながら、Aは自分自身を鼓舞した。その信頼を、失うことのないように。
『いけ、A』
脳内で映し出された、全ての舞。−−白の呼吸の、型。肺が痛くて、身体の負担が大きい。慣れない、身体が追いつかない。それでも、それでも、守れ、其の刃で。
──白の呼吸 弐ノ型 月白風清
闇夜の白く輝く月を連想させる刀身。秋の風のような斬撃を放つ。鋭さがありながら、涼やかに。横一文字に触手たちを斬っていく。乗客達に触れる前に。
｢ぐ、ぅ｣
痛い、痛い。けれど、守ると、決めたなら。誓ったのなら。次の、技を。
｢息を！！息をしてください！！｣
−−千尋の声。Aはその声にハッとした。ヒュッと息が詰まって、己が息を忘れていたことを感じた。噎せて、生理現象により涙が出る。Aの背中をそっと、彼が撫でた。
「すみません、突然。けれど、どうしても貴女に礼を言いたかったんです。」
危ないから、逃げてと言いたかった。言いたかったが、驚いている肺がそれを拒んで、己の背を撫でる千尋の手を受け入れてしまった。
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作者名：僕達はエンジェル | 作成日時：2021年9月25日 14時
