陸−起きろ、起きろ、起きろ ページ6
＊
“それ”が姿を変えた。少年の、夢を見てまで、鬼に縋ってまで逢いたい人に。
「ね、ねえ、ちゃんっ！！」
「泣かないで、泣かないで。置いていってしまってごめんね。愛しているわ−−千尋」
少年＿基、千尋は縋った。鬼ではなく、姉に。蹲って泣く千尋を、姉は抱きしめた。
−−彼女の無意識領域は、“それ”が触れた者の、大切な場所へと空間を変える。そして、小人はAの優しさ、暖かさ、慈しみの化身だ。それは、触れたその人の一番逢いたい人に姿を変え、優しさでその人を包み込むためにいる。
日向Aとは、人を大切にし、思い出を大切にする。そして、何にでも染まりやすく、染まりにくくもある。矛盾しているが、そういう人間だ。感受性強く、誰に対しても慈愛の心を持ち、優しさで包む込む。それらがAを構成している。
そして、精神の核は大抵の人は澄んでいるが、何故Aの核に禍々しいものが付いているのか。それは鬼舞辻無惨の血だった。その血は、今となっては少ししか付いていない。それは、Aが眠っている間に、呪いを解いたためだ。
彼女は、眠っている間、一度だけここへ来た。御先祖様の時とは違う空間だ。今は真っ白だが、鬼になって来た時、暗くて寒かった。化身達は怯え、寒さで震えていた。核も真っ黒だったのだ。Aは、それを拭いた。あと少し、という所で御先祖様から襟を引かれて、少し残った状態のまま覚醒してしまっていた。彼女が何故、そうしたかは分からない。
千尋の体が、下へと落ちる感覚。
「起 き ろ」
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「斬るんだ、頸を。はやく。また、誰も守れず惨めに泣く羽目になる」
それは、どちらの事を言っているのだろう。目を伏せて、思いふけるような表情の御先祖様がそう言った。
ぱちり、ぱちり。瞬きをすると、Aの着物は隊服に戻っていた。腰には刀が差してある。いつもの姿へと、戻った。爪も、牙もはえて、また鬼へ戻った。
「あ、あり、が、とう、ご、ごせんぞ、さま」
また、たどたどしい言葉に戻っしまったが、御先祖様はただただ、優しく笑っていた。
「さあ、A、行くんだ。」
Aは抜刀し、刃を首筋当てる。震える。けれど、切らなければ覚醒しない。乗客も、炭治郎も、禰豆子も、善逸も、伊之助も、煉獄も。皆を救う為に、覚醒しろ。
切った。白い雪は血の赤が飛び散った。
「起 き ろ」
漆−乗客達を守れ→←伍−それはまるで菩薩のような慈悲深さだった
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作者名：僕達はエンジェル | 作成日時：2021年9月25日 14時
