拾陸−集中 ページ16
＊
「全集中の常中ができるようだな！」
炭治郎の目に、煉獄の顔が突然入った。驚きはしたものの、無事でよかったと炭治郎は心の底から思った。
「常中は柱への第一歩だからな！柱までは一万歩あるかもしれないがな！」
「が、頑張ります」
「腹部から出血している。もっと集中して、呼吸の精度を上げるんだ。体の隅々まで、神経を行き渡らせろ。＿血管がある。破れた血管だ。」
煉獄の指示通り、神経を行き渡らせる。すると、己の体の筋肉から血。腹部の血管。あった、この血管が破れて、血が出ている。ハッとそれが分かった炭治郎。煉獄もそれに気づき、「そこだ」と言う。
「止血。出血を止めろ。」
歯を食いしばって、痛みに堪えながらそこに神経を集中させて、力を入れる。中々、上手くいかない。すると、トン、と額に指があてがわれた。
「集中」
煉獄の言葉通り、ググ、ともっと力を入れた。
「っぶは！！はあ、」
「うむ、止血できたな！呼吸を極めれば、様々な事が出来るようになる。何でも出来る訳では無いが、昨日の自分より、確実に強い自分になれる。」
「……はい」
煉獄は、炭治郎の返事を聞いて笑った。お日様のような、それでいて幼いものだった。
「皆無事だ！怪我人は大勢だが、命に別状はない！君はもう、無理せず＿」
煉獄の話の途中、音がした。何かの擦れる音。スザザ、と音がした。煉獄の表情に笑顔が消え、警戒したような面持ちになった。
音の先を見る。すると、そこにはボロボロで、血を流すAの姿があった。青ざめた。出血で、余り顔色が悪くはなかったのが、Aを見て、もっと。
ふらふらと、立ち上がり、腹を抑えながら、炭治郎はAの元へ向かった。煉獄に支えてもらいながら。
「A、A……っ？どう、したんだ、その傷」
汽車から放り出されてできた傷にしては、おかしい。こんなにも血が出ている。右手に握っている刀は、刀身が折れているし。
「無事か、日向妹。君、傷が回復しないのか？」
「た、たぶん、ですが、A、疲弊、して、遅くなっているんだと、思います。」
人を喰ってないし、沢山戦ったから。煉獄も、それは知っている。その双眸で見たのだから。
「…そうか。日向妹、頑張ったな。乗客は皆無事だ。」
煉獄がそう言うと、Aは安堵したように、目を細めた。けれど、ぱっとまた見開いて、口を動かした。
けれど、それは大きな音に遮られた。
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作者名：僕達はエンジェル | 作成日時：2021年9月25日 14時
