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〈酷い雨だな。明日には止むのか…?〉
「明日には止むことを願うしかないよね…」
「確かにね。こんな雨だとタクシーも来れないだろうし。」
雨とタクシーが関係するかは置いておいて、脳内で「アナザー」にだけ伝えたつもりの言葉が漏れていた事にびっくりしながらうん、と頷く。
ふと、視線を感じて後ろを振り向く。しかし、そこには誰もいなかった。気のせいか、とまた歩き出す。ステラはそれに気づかなかったらしい。
歩きながら考える。あまりここに自分が留まるのは臨時村長にも、村に住む人達にとっても良くないだろう。自分を見る村人達の目は、恐怖や憎悪が潜んでいた。さっきの視線も、少なからずそれらを含んでいた。
〈…早く、他へ行きたいな。正直、視線が痛い。〉
「だよね。せめて、起こったことを教えてくれれば良いのに。なんで、誰一人…」
相棒も同意を示す。なるべく早くここを出たいものだ。
役場の前の曲がり角に訪れる。相変わらず雨はザアザアと降り注ぐ。泥に足を取られないように気を付けながら、下を向いて歩いていた。周りへ注意を配っていなかった。それがいけなかった。
突然、腹部が熱を帯びる。その熱は徐々に強くなり、痛みとともに脈を打ち始める。反射的に痛む部位へ手を当てると、べチャリ、と何かが付いた気がした。手は、腹は赤く染まっていた。
「…え?」
力が抜け、泥に膝を着く。ゆっくりと後ろを向くと、黒ローブを羽織った何者かがたっていた。その手には赤い刃物が握られていた。
「な、んで?」
〈…嘘だろ。〉
「アナザー」は冷静だった。何故か、酷く頭が冴えている。刺傷は、背中から貫通している。内蔵をやられた。おそらく、助からないだろう。
相棒は酷く困惑していた。嫌われてたのは分かっていたとはいえ、ここまでとは思わなかった。自分が具体的に何をして追われたのかが分からないので、その尺度すら測れない。せめて、誰かが教えてくれれば。
「アナザー…!」
ステラは倒れたアナザーを目にすると慌てて寄ってきて、こちらに声をかける。チラリとローブ姿を目にすると、グルル…と唸り声を上げる。ローブは逃げた。
〈こっちは裁かれる理由すら知らねぇってのに…〉
「…ごめんね。」
意識が遠くなる。大声でグラスを呼ぶステラの声が聞こえる。雨が、泥が体温を奪っていく。雨と共に血が流れ出していく。
〈はっ…ここで終わりかよ。〉
悪態をつきながら、意識を手放した。
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桜とおもち(プロフ) - イベント参加ありがとうございますm(_ _)m 文章が凄い!! 語彙力めちゃめちゃありますね✨️ 尊敬です! (2022年9月4日 14時) (レス) @page1 id: acf700690e (このIDを非表示/違反報告)
ユッピー - イベントから来させていただきました。 おもしろい作品ですね。 右星失礼します。 出来たらイベント方にも、、、 お願いします! (2022年3月5日 13時) (レス) id: 6b09c899b4 (このIDを非表示/違反報告)
リール - シトラスさん» プレイさせて頂きました。長々しい描写やセリフを見事に簡潔に落とし込まれていてプレイしやすかったです!まさかのキラクサ、ノモギ、イトマキ草が出てきて驚きです(笑)わざわざありがとうございます。プレイしていて楽しかったです! (2021年12月29日 1時) (レス) id: 0b2220b92c (このIDを非表示/違反報告)
シトラス(プロフ) - こちらです。https://game.nicovideo.jp/atsumaru/games/gm23820?key=2f9881f8d2d7 限定公開のはずなので新着には上がりません。グラスと出会うところまで作りました。 (2021年12月28日 6時) (レス) id: 2edafec9c3 (このIDを非表示/違反報告)
リール - シトラスさん» まさかの操作パートまで…ぜひプレイさせて頂きたいです。 (2021年12月22日 0時) (レス) id: 0b2220b92c (このIDを非表示/違反報告)
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