Myself【オリジナルRPGシナリオ小説版】

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何を言っているんだ。自分でわかっているだろう。そんな目で見つめるイルビナの視線に気づいて、慌ててグラスが付け足す。

「アナザーは、記憶喪失なんです。」

「…そう。」

　彼女は目線を一切ずらさぬまま、小さく答える。
　それを見て、アゲントは困った顔で詫びると、話を続ける。

「すみませんね。彼女にも色々ありまして。えぇと、具体的にどのように関係しているかは、先程も言ったように僕には分かりません。詳細を調べるために村長がわざわざニンゲンの街へと出向いています。
ただ、噂ではあなたが『指名手配』されていて、それを捕まえにやってきたのではないか、という事になっています。この村は指名手配犯を匿っていたグルとして攻撃された、と。
根拠は…5か月前、村長があなたを別の村から引き取った、そして預かり先の村はその数日後に滅びたという事実からです。」

　指名手配。身体に力が入るのがわかる。村に手をかけてないにせよ、何か罪を犯したのには違いがないようだ。
　…しかし、いくつかの疑問が余計に混乱させる。村から引き取られた？…なら何故、ニンゲンに指名手配されている？
　疑問が頭をグルグルと回り、軽くパニックになる。
　知ってか知らずか、ステラは問う。

「1番事情を知っている村長は今、ニンゲンの街にいるんだね？」

「はい。」

「…彼に会いに行くことはできるかい。何か、嫌な予感がするんだ。」

　アゲントは目を伏せ、少しばかり沈黙する。しばらくして、大きく頷くとメモに何かを書き、そのページを破るとステラに差し出した。

「これが村長の宿泊先です。私の方から連絡しておきますので御安心を。少しばかり遠いですので、タクシーを依頼しておきます。」

　そこで久しぶりにイルビナが口を開く。

「…本気でタクシーが来ると思ってるの？村長、外を見てよ。大雨だよ。」

　外は、いつの間にか黒雲に覆われていた。運良く傷を負うことのなかったガラスは厚いのか、いささかのノイズも部屋に持ち込まない。しかし、大粒の水滴は窓ガラスを打ちて流れ落ちる。今からこんな山奥にやってくるモノ好きはいないだろう。

　村長は悩む素振りもなく言った。

「…では、村に一晩泊まって行って下さい。まだ使える空き家をお貸しします。食事も用意しましょう。大したことはできませんが、これをおもてなしと受け取って頂きたいです。」

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