・ ページ25
村は森の脇を流れる川の上流部に位置している。ほとんど山頂付近に位置するその村へ行くには川を辿って源流へ向かうのが最も楽な方法だった。数時間歩いては小休止を取り、休めばまた山を登る。この山はそこそこに高いものの所々に多く存在する崖を除けば坂が緩やかであった。しかし、その分、山頂へ行くまでに長い道を辿る必要があった。
やがて太陽が山際に触れた。そろそろ日が暮れる頃だ。3人は川を登るサーラン魚を焚き火で焼いて夜ご飯とした。腹に卵を抱えた魚は脂が乗っていて、大変美味しかった。
腹ごしらえを終えた後、一行はひとつの木下に集まり、お互いを温めあって眠った。その姿はとても出会って1週間も立たない人物同士とは思えない。むしろ、家族のような自然さがあった。
日が登り、鳥が囀る。目を覚ましたステラはゆっくり立ち上がると食用の葉を集めて清らかな川水で洗い、サラダを朝食として拵えた。完成のタイミングでまだ湿っぽさが残る風が眠る2人の頬を撫でる。目を覚ました2人も支度をして食事を終えるとまた山頂へと登りだした。
登り始めて1日と3時間。ようやく村と思える何かが見えてきた。村を囲むフェンスがは遠目に見える場所まで来たところで、何者かに話しかけられた。
「やっと来はったか。待っとったで。ようこそ、レント村へ。」
貼り付けたような笑みを浮かべる、黒い毛並みの九尾の狐。どう見てもアウターの集落である村の住民には見えなかった。細い目を少し開いて3人を順番に見つめると、あっけらかんと言い放つ。
「あんたらは…『逃亡者』に『同族嫌い』、そして『混ざりもの』か。これまた癖の強い3人が揃うてることで。」
「え……」
息を飲む音が聞こえた。ステラにグラスが絶句する。アナザーも自分の事が言われているのが分かった。」「混ざりもの」、確かに適切な言葉だろう。…しかし、それは「本物のアナザー」…もとい、別人格の存在を知っている事を意味する。悪寒が走る。彼女は、きっと他のことも知っているだろう。
狐は悪びれる様子もなく、あれ、ちゃうん?と首を傾げている。
「…あなたはなぜそう思うんだい?あまり表に出して言うことではないだろうに。」
「あ、否定しいひんのやね。」
けたけたと笑い終わると、閉じられていた目が見開き、ステラをしっかり捉えながら言う。
「うち、全部知ってるさかいな。」
1人がお気に入り
「オリジナル」関連の作品
この作品が参加のイベント ( イベント作成 )
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
桜とおもち(プロフ) - イベント参加ありがとうございますm(_ _)m 文章が凄い!! 語彙力めちゃめちゃありますね✨️ 尊敬です! (2022年9月4日 14時) (レス) @page1 id: acf700690e (このIDを非表示/違反報告)
ユッピー - イベントから来させていただきました。 おもしろい作品ですね。 右星失礼します。 出来たらイベント方にも、、、 お願いします! (2022年3月5日 13時) (レス) id: 6b09c899b4 (このIDを非表示/違反報告)
リール - シトラスさん» プレイさせて頂きました。長々しい描写やセリフを見事に簡潔に落とし込まれていてプレイしやすかったです!まさかのキラクサ、ノモギ、イトマキ草が出てきて驚きです(笑)わざわざありがとうございます。プレイしていて楽しかったです! (2021年12月29日 1時) (レス) id: 0b2220b92c (このIDを非表示/違反報告)
シトラス(プロフ) - こちらです。https://game.nicovideo.jp/atsumaru/games/gm23820?key=2f9881f8d2d7 限定公開のはずなので新着には上がりません。グラスと出会うところまで作りました。 (2021年12月28日 6時) (レス) id: 2edafec9c3 (このIDを非表示/違反報告)
リール - シトラスさん» まさかの操作パートまで…ぜひプレイさせて頂きたいです。 (2021年12月22日 0時) (レス) id: 0b2220b92c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ