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「Aさん、髪の先濡れてる」
『嗚呼…水仕事してると気付かないうちに付いちゃうんだよね。ほっとけば乾くよ』
「髪痛むだろ」
『私はお嬢さんみたいに細かく気を使う必要ないの。仕事第一』
「誰がお嬢さんだよ」
眉を顰めて苦言を呈する千切。髪を少し乱暴に撫でられた。
千切に撫でられるのは嫌いじゃない。むしろ好きで、なんか心地良くなるんだよなぁ。なんて考える私の頰は、きっとダラしないく緩々に伸びてるし、情けないばかりだ。たぶん私が猫だったら、ゴロゴロ喉を鳴らしてるんだと思う。
「(なんだその顔。反則級に可愛い過ぎるだろ…その顔させんのは、一生俺の特権が良い)」
『千切。眠くなりそうだからここら辺でパス』
「了解、お姫様」
『……成人済みの私にお姫様はキツい』
凛々しい表情を作った千切は、サラリとそんな事を言った。物凄く様になってるけども、相手に私を選ぶのは辞めておいて。もっと可愛い子にやってあげるのが良いと思うよ。
満足したのか頭から手を退かした千切は、今度は何を思ったのかゴムを外して髪を解き始めた。
『どうかした?』
「Aさんの髪、結んでも良い? 濡らしとくのは俺が気に入らない」
『え、いや良いよ。というか自分で結ぶよそんなら』
「俺の方が絶対に上手い」
『それはそうでしょうとも』
なんだかんだで言い包められた私は、千切に髪を委ねてしまった。青い監獄の選手達って言葉巧みなんだよな。それに流される私に問題があるんだろうか。なんて悶々と悩んでいる間に、あっという間に崩れひとつないポニーテールが完成していた様だ。
「完璧。鏡はないから見せられないのが残念」
『後で見るよ、ありがとう。でも、千切は良かったの。髪邪魔にならない?』
「もう一本持ってるから」
言って、腕に通されていた髪ゴムを手にした千切。両手で髪をまとめ上げて、髪ゴムを唇に咥える姿が、ちょっとびっくりするくらい似合ってた。まじまじと千切を見つめてると『あれ、』と一つ気がついた。
『千切、そっちで私の結べば良かったのに』
「……あー、本当だな(俺が身に付けてたもの、Aさんに渡したかっただけ、だけど)」
▼「千切豹馬 ヤンデレ危機一発」
青い監獄の中では本人に対しては比較的穏便な選手。しかし周囲に対しては牽制の抜かりがない。少しずつ、でも確実に自分に溶かして行くのが戦法。自分の“特権”が特権じゃ無くなると爆発しかねない。
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テディ - ひまさん» 最高の小説なんて嬉しすぎるお言葉…大感謝です、ありがとうございます。単純なので褒められるとやる気爆上がりします!更新頑張ります〜!! (2023年3月6日 19時) (レス) @page9 id: cd440b7134 (このIDを非表示/違反報告)
ひま - 小説見あさってたら最高の小説を見つけてしまった…めっちゃ続き楽しみです!更新頑張ってください! (2023年3月5日 21時) (レス) @page9 id: 34d7bd651a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:テディ | 作成日時:2023年2月23日 15時