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「やぁ、
『お疲れ様、カイザーさん』
ニコリと腹立たしいほど美しい笑みを浮かべて挨拶するこの選手、ミヒャエル・カイザー。ドイツの皇帝様。青い監獄生の顔面もたいそう整ってる綺麗な顔立ちだけど、カイザーさんのそれとは違ってくる。
子猫ちゃん、なんて普通に言われたら悪寒すらしそうだけど、カイザーさんが言うとなんかしっくり来る不思議現象。たぶん私、カイザーさんより年上なんだけどな。
『掃除中だから用事があるなら後でにして欲しい』
「そう照れるなよ。好きな男に冷たく当たるのは脳の足りない幼稚な奴がやる事だ。素直に嬉しいと言えばいい」
『もしかして翻訳イヤフォン壊れてる? それとも脳みそか耳が働いてない?』
それを帳消しするほどカイザーさんは悪趣味だった。最近になって暇さえあれ私にちょっかいを掛けてくる。私なんぞを揶揄うことに時間を割くくらいならサッカーに励んでほしいと思う今日この頃。
「…煙草の匂いか」
『え、そんなに濃い匂いする?私には分からないんだけど…』
乙夜に続いてカイザーさんまで言うか。繊細な眉を片方だけ上げるなんて器用な事をするカイザーさん。服の裾を鼻まで持ってきて嗅いでみる。特になんの変哲も無し。いつも通りだった。二人の鼻が良いのか私の鼻が詰まっているのかな。
『もしかして臭い?』
「いや、臭いわけじゃない。少し気になっただけだ」
『それを臭いって言うんです』
しかめっ面を作るカイザーさんは、ふと何かを閃いたような顔をした。私を後ろから包み込む様にカイザーさんの茨が彩る逞しい腕が回された。
反駁する間もなく、どこから取り出したのか、いかにも高価そうなビンを手にした。たぷたぷと揺れる液体を見る限り、おそらく香水だと思う。今もカイザーさんが身に纏ってるやつと同じだろうか。
「A。少し目を瞑れ」
『…? はいはい』
持ち歩いてるのかな。だとしたら私より圧倒的に女子力高いなとか思いながら言われた通りに従う。瞼を閉じ切る直前、悪意で彩られた笑顔を見た気がする。気の所為であって欲しい。
『ぎゃっっあ!?』
直後、細かくて冷たいものが無数に肌に浸透していく感覚に襲われる。背中が粟立って反射的に目を開けたら、ご満悦なカイザーさんがいた。
「どうだ? 少しはマシになっただろう」
『……は? …え、なに、何?』
馬鹿正直に目を瞑った私はアホだと思う。この人、私に香水振りかけたんだ。
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テディ - ひまさん» 最高の小説なんて嬉しすぎるお言葉…大感謝です、ありがとうございます。単純なので褒められるとやる気爆上がりします!更新頑張ります〜!! (2023年3月6日 19時) (レス) @page9 id: cd440b7134 (このIDを非表示/違反報告)
ひま - 小説見あさってたら最高の小説を見つけてしまった…めっちゃ続き楽しみです!更新頑張ってください! (2023年3月5日 21時) (レス) @page9 id: 34d7bd651a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:テディ | 作成日時:2023年2月23日 15時