No.64/最高と最悪。 ページ15
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しん、と静まりかえった部屋。士道とAのやり取りは、漏れなく視線を釘付けにしていた。Aが曝け出した、いつもより幾分も荒んだ態度。ド肝を抜かれたのは、存外、士道よりも野次馬達だったのだ。
瞼を上下させる士道。驚きに染められた顔は、そう時間の経たないうちに、頰を紅潮させて蕩けるような表情を作った。
そして、ガスが充満しているほどの危険を持つ空気に、爆弾を投下した。
士道「やっぱり、Aちゃん最高♡さすが、俺のAちゃん!」
途端、場のがグッと冷え込む。もちろん完璧たる設備で管理された青い監獄でそんな事起きようもないので、あくまで感覚の話だが。関係のない一般人が紛れ込んだら、ガクガクと震えだすに違いない。
視線が矢の如く突き刺さる。余す事なく全方位から、士道に向けて。もし、視線が本物の矢ならば、今頃士道の身体は穴だらけだ。
『…………、すいません(最悪だ…)』
一方。
冷静さを徐々に取り戻したAは、自分の失言に気づいて凍結していた。顔色から、血の気が引く。
一斉に向けられる、まさしく殺意と呼ぶべきものを受ける士道は、対して飄々としていた。意に介すことなく、なおもベタベタと引っ付く。まさに一触即発の空気感だった。
《はいはい、そこまでで終わりにしておけ才能の原石ども。Aに無駄に負担を掛けてやるな》
そこを切り裂くように、タイミングよく画面に映し出された絵心。
呆れ気味に吐き捨てた絵心に、それぞれが滲み出した殺気を仕舞い込んだ。
Aは、インカムから入った絵心の指示にこめかみを抑えた。
“士道龍星の監視役”を兼ねての試合経過観察。先程、無礼極まりない発言をしたと病んでいるAにとっては先が思いやられる。
なんであんな事を言ってしまったのだと、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。ズーンと肩を落とすAは、ヨボヨボとフィールドに続く廊下を歩く。と、いつのまにか目前に背中があった。
『っわ』
「あ、マネージャーさんだべ」
なんとか急ブレーキをかけ、踏み止まる。
すみませんと、謝ろうとして顔を上げ、満点の笑顔が間近にあった。七星虹郎だ。
七星「俺、いつもお世話になってるから、絶対感謝したいって思ってたんだべ!Aさん、いつもありがとうございます!」
『あ……こ、こちらこそ?』
キラキラと溢れんばかりに瞳を輝かす七星。握手して、ブンブンと大きく降った。
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えむ(プロフ) - 続き待ってますめちゃくちゃ面白かったです🥲 (8月2日 14時) (レス) id: 7e28d2c99c (このIDを非表示/違反報告)
闇まんじゅう(プロフ) - めちゃめちゃに面白いです!しどー少しは空気読んでwww (2023年3月22日 22時) (レス) id: a2e3403032 (このIDを非表示/違反報告)
藍Na。 - ルアンさん» ありがとうございます!頑張ります。 (2023年3月15日 16時) (レス) id: cd440b7134 (このIDを非表示/違反報告)
ルアン(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです!!! (2023年3月12日 13時) (レス) id: 6a2282d5fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藍Na。 | 作成日時:2023年2月6日 16時