あの子を堕トシタイ。Ⅱ (ページ2)

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No.51/御曹司様の欲しいもの。ページ2

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世界選抜戦も最後の一試合。

Aは七度めといえ、試合前の雰囲気は緊張と興奮が入り混ざって落ち着かない。

玲王「……A？久しぶり」

『……み…玲王さん。お疲れ様です』

玲王「相変わらず、そのぎこちなさは抜けないな」

苦く笑った玲王は、次いで困ったように笑った。

玲王「A。俺は結局、凪とワールドカップ優勝したい。それが俺と凪の約束で…俺の夢だから」

『………そっか。 …うん、玲王さんがそう言うなら、それで良いんです…玲王さんだけのエゴだ』

玲王「……あぁ…凪とは、最近会ったか？」

『……凪さん…玲王さんが居ないから誰彼構わずおんぶを頼むんです。私には重くて』

自分から聞いたくせに酷く胸が痛んだ。

心臓に棘が突っ掛かった様な、鈍いような鋭いような痛みだった。

何故だろうか。凪を語るAへの僻みだろうか。凪に頼られるAへの妬みだろうか。

だとしたら。Aの口から“凪”と漏れた事に不快を覚えて気がしたのは、凪を思い出して柔らかい笑みを浮かべた途端に心臓を締め付けられた気がしたのは、何故だろうか。

『もうすぐ試合ですね･･････頑張れ、玲王さん。私は全力で応援します…いってらっしゃい』

霜が溶けて嬉しそうに咲いた春の花。そんな美しさを連想させる。その無垢な笑顔ときたら、あどけないったらない。

あまりの刺激に眩暈すらしてきた。眩しすぎて直視できなくて玲王は視線を逸らす。

心臓が、激しく跳ね上がる事を繰り返す。この感情はなんだと、問い掛けてくる。

玲王「(ああ、好きだな)」

ぱっと浮かんだのは、馬鹿みたいに簡単な答え。

なるほど。心にすとんと落ちる。

気づいた瞬間に、心臓が、Aの色に染まった。

『……？…玲王さん、大丈夫ですか』

玲王「っはは……ああ、大丈夫だ」

可笑しくて笑えてきた。

凪が好意を寄せる相手に苛ついてると思っていた感情は、どうやらAが楽しげに凪と話すのが嫌だと言う、恋心だったらしい。

Aに触れれば戦争に巻き込まれる。弾丸が雨のようになって、その火は必ず玲王に影響を及ぼすこと、想像に容易いことだ。

けれど手を伸ばさずにはいられないのだ。

だってきらきら輝く宝石をみたら、自分だけの宝箱にしまいたくなるのが玲王の本能だから。欲しいものは追い求める玲王だから。

玲王「(誰にも譲らない。俺が手に入れる。絶対)」