【本編】迷い犬の鬼殺奇譚・改【リレー小説】 (ページ40)

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.情報収集【白銀琥珀/魑魅零】ページ40

『…』

「やァ、奇遇だね。君達もこの世界に飛ばされたのかい？」

「兄さん！」

太宰が、颯を背後から抱きしめるようにして、肩に両腕を置きもたれた。ヘラヘラと軽く手を振り、にこやかな笑顔をつくる。

全く、先程まで実の弟が死にかけていたというのにこの男は。まァ、彼なりに心配もしてれば愛情表現もしているのだろうが、態度が気に食わない。

別に、颯が羨ましいとかではない。

決して。

「この世界？」

と、下津さんが食い付いた。如何にも知識に貪欲な彼らしい。其れに、正直なところ私も気になっていた点ではあるから、嬉しい質問だ。

「其の様子だと未だ自分達の状況が理解出来ていない様だね。颯を助けて貰った様だし、武装探偵社が掴んだ情報をあげよう」

何だろう、この上から目線。

そうして太宰は様々な情報を落としていく。何も状況を掴めずにさ迷っていた私達にとっては、どれも素直に有難い内容であった。唯一不満事があるとするならば、鬼に対しての情報が少な過ぎる事だが、他組織も来ているなら、その内其れ等も分かるであろう。

「成程。所謂、タイムスリップ又は異世界転移という訳だな」

納得したように、呆れたように師匠が頭をかいた。

『で、太宰は一人で何してる訳？』

「此処へ来る際に社員達がバラバラになってしまってねェ。回収して回っているのだよ。私は颯を迎えにね。君達も一緒に来るかい？」

「遠慮しておこう。私達はフィッツジェラルド様の元へ戻らなければならない。それとも、白銀さんだけ残ると言う手もあるが」

『結構です』

下津さんが特に迷う様子もなく太宰の問いに答える。私に話題を振ってきたが、特に着いていく理由もないため断る。どちらかと言えば、正しい情報把握が可能そうな人と合流したいように思う。

…誰が居たっけな。

ポートマフィアの永遠月輪廻

同じく八尋星夜

異能特務課の坂口安吾

天人五衰は…、不明だが恐らく状況は把握しているだろう。

どれもこれも敵対組織だが、まぁ、いつかは何とかなるだろう。

「冷たいねェ。ね、颯」

「兄さんの日頃の行いじゃないの。僕達の事はいいから皆さんどうぞ」

と、太宰が颯に同意を求めるが、颯は太宰へ視線を向けずに私達に話しかける。全く、出来た弟だ。あの阿呆とは大違いだ。

ま、別に嫌いと言う訳ではないが。

「そういう事なら。ほら、行こう。フィッツジェラルド様もそろそろ暇になってくる頃だ」

師匠が下津さんと私の手を引いた。